運動の基本方針 – 行動目標

雇用の安定

 わが国の労働事情は、産業形態の変化や構造調整の進展、製造拠点の海外移転と国内産業の空洞化、情報化の進捗、高齢化の進行に加え、就業構造の多様化、さらには外国からの労働者流入の問題など、大きな環境変化が進んでおり、新たな雇用問題を起こしている。

 労働者にとって何よりも大切なことは、雇用の安定である。経営者は、雇用の継続と社会的な労働条件を保障する責任を負い、労働組合は経営者がその責任を的確に果たすよう監視する責務をもっている。

 私たちは、労働組合の永遠の目標である完全雇用社会をめざす。そのために、経営者に対しては職場要員の確保、種々の変化に備えた職業訓練、職業能力開発の充実などを求め、不当な合理化には断固反対の姿勢を貫く。

 さらに、これまで以上に経営のチェック&パートナー機能を高め、労使協議会の充実など広義の経営参加を進めることにより、つねに先手の雇用対策を構築していく。

 国や地方自治体に対しても、雇用問題を軽視した産業政策の推進には反対し、人間尊重に徹した産業・雇用政策の確立を求める姿勢を貫く。また自らも職業紹介活動などを通じて、離職を余儀なくされた組合員の再就職支援を行う。

公平・公正で納得性のある社会の実現

 社会の成熟化による生き方・働き方の多様な価値観の定着、産業構造の変化にともなう第三次産業従事者の増加、さらには90年代の長期低迷期における人件費流動化政策の定着等々、様々な要因によりわが国における就業構造は大きく変化してきている。現在、雇用労働者の3割を超える労働者がパートタイム労働者や契約社員、さらに派遣・請負労働者といった、いわゆる有期雇用労働者となっている。

 わが国が今後とも安定した経済的・社会的発展を果たしていくためには、多様な働き方を選択した全ての労働者が公平・公正で納得性をもった労働基準に守られ、働く能力を高め、十分に発揮することができ、安定した将来生活が可能な社会にしなければならない。

 私たちは、公平・公正で納得性のある社会の実現をめざし、税制や社会保障制度さらには労働関係法をも含めたわが国の様々な仕組みを見直し改善をはかる取り組みを進める。

男女共同参画社会の実現

 男女共同参画社会の実現への取組みは、人間尊重を基本におく自由・平等・公正の実現には不可欠な取組みと考える。私たちは、男女がともにそれぞれの力を発揮し生き生きと働けるよう、職場における機会と処遇の均等化を進めていく。さらに仕事と生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)のとれた生き方を可能とする社会の実現を進める。

労働条件と福祉の向上

(1)労働条件の向上

 私たちは、労働組合の基本的任務の一つである賃金、労働時間など、基本的労働条件の維持向上のために、たゆまぬ努力を積み重ねていく。

 賃金については、二つの原則である「生活を十分に保障する賃金」「同一価値労働同一賃金」を基本とし、働きがいのもてる賃金水準の確立をめざす。

 また、期末一時金は季節賃金に十分な成果配分の積み上げ、退職金は老後生活を支える水準確保を基本に、個人配分にあたっては合理的で納得性のある制度・体系の改善をはかる。

 労働時間の短縮は時代の要請であり、先進国水準から立ち遅れているわが国の実態に照らし、運動を積極的に推進し労働と健康そして生活との調和がはかられ、ゆとり・豊かさを実感できる生活の実現をはかる。

 とりわけ、第三次産業における労働時間の実情は課題も多く、多様な労働時間と生活時間の組み合わせを基本とする考え方をもち、積極的な取組みを進める。

 私たちは、産業別組織としての闘争力を強化し、組合員の労働条件を横断的に高めるため、産業別統一的労働協約を締結するよう努力を重ねる。また、最低賃金や労働時間など基本的労働条件については、労働協約の拡張適用などを通じて、未組織労働者の労働条件の改善にも役割と責任を果たす。

(2)福祉の向上

 人生80年時代に入り、国民の福祉に対するニーズはますます高まっている。私たちが求める福祉社会は自助努力中心でも、すべてを公的保障に委ねるものでもなく、公・民の適切な組み合わせによる調和のとれた適正給付、適正負担の社会である。

 私たちは、国に対しては年金、医療、介護システムなどについて、明るく不安のない生活が送れるよう充実したナショナルミニマムを求めていく。企業に対しては公的保障では不十分なところの上乗せ給付や財産形成援助などを求めていく。また、個人の自助努力を支えるため、生涯生活設計のための情報の提供を行うなど、共済制度の充実をはかる。これらの政策や運動によって、安定・安心な社会の実現をめざす。

(3)共済活動

 私たちは、「一人は万人のために、万人は一人のために」という相互扶助精神のもと、スケールメリットを活かし、組合員のニーズに応えられる充実した共済事業に取り組む。

産業政策

 私たちは、UAゼンセンの組合員が携わる産業・業種が日本経済の中で占める地位を絶えず明確にしながら、雇用の安定と労働条件の向上をはかるため、自らが働く産業の安定と健全な発展を実現させる産業政策を推進する。その立案にあたっては、通貨や貿易など国際的なルールやグローバルな視点もふまえながら進める。また、内外価格差の是正や公正取引の推進など、消費者利益の確保という観点から、産業・企業活動の健全化をめざした政策の立案と実行をはかる。

 さらに、中小企業の近代化の推進、産業構造の改善、流通の合理化、規制の緩和、環境保全型の経済体系、活力ある産業基盤づくりなどについて、自らの政策をもち、その実行に努める。

 そのために、UAゼンセンと経営者団体との会合をはじめ、産業別労使会議や地域別、企業別労使会議など、各級の労使協議体制の確立をはかるとともに、政府に対しては審議会等への参加、さらにUAゼンセンの政策を理解する政党を通じて、私たちの政策や意見を反映させる。

政策・制度要求

 私たちは、労働協約の改善を通じて、雇用や労働諸条件の維持向上のための取り組みを進めていく。しかし、労使間で解決できる課題は限られており、社会保障や税制、さらには物価の安定や教育問題など、経済・社会制度の分野では国や地方自治体レベルでの取り組みが必要である。

 私たちは、経済、税制、雇用、男女共同参画、福祉・社会保障、土地・住宅、食料、資源エネルギー政策などの充実や、地域環境問題への対応、行財政・司法改革を進める運動を強化し、ゆとり・豊かさ・公正を追求する姿勢を貫く。

 私たちは、「連合」との連携をはかりつつ、国・地方での政策・制度要求の実現に努力する。

政治活動

 私たちは、これまで述べた政策・制度をはじめとする政治的要求の実現をめざして積極的な活動を展開する。

 そのためには、日常的に中央・地方の議員との相互協力関係を強化し、政策・制度の理解促進と推進実現に向けた活動を進める。また、大衆活動としての示威行動や請願活動も進める。

 さらに議会制民主主義を尊重する立場から、選挙活動では公民権を積極的に行使し、この公民権行使を通じて中央・地方の相互協力関係議員の支援活動を行う。

 同時に支持、協力、提携関係をもつ政党の躍進と、政権獲得、維持強化への支援を強めていく。

 これらの一連の政治活動の展開に際しては、労働組合本来の機能を逸脱することなく、つねに主体性を堅持した活動を進める。

 また、政治活動が全組合員の参加に結びつく活動として、実践のなかで教育と情報提供活動を充実していく。

教育・文化・社会活動

 労働組合の活動は人によって成り立っている。UAゼンセンが活力のある運動を継続していくためには、組合員が労働組合の理念や目的、その活動を理解し、また、運動を引っ張っていくリーダーや活動家をあらゆる職場で育てることが大切である。

 私たちは、中央教育センター「友愛の丘」を教育活動の拠点として、多様なメニューによる教育活動を進める。

 経済的豊かさだけでは、私たちのゆとり・豊かさは実現しない。私たちは、心の豊かさが感じられる文化活動にも力を注ぐ

 私たちは、北方領土返還や地球環境保全といった国民世論の形成や社会的責任を果たす運動を進める。さらに開発途上国の貧困の撲滅や人道的な問題、大きな災害を被った地域へのカンパ活動やボランティアなど、社会貢献活動も積極的に推進する。