”超高齢化社会に備え、介護従事者の処遇改善は急務”
本田政務官に現場の声を伝える染川会長(右から2人目)
現在、日本では少子化・人口減少の傾向が依然として継続しており、今後も続く超高齢化社会に備える必要があります。一方で、超高齢化社会を支える介護サービスの職業の従事者については、有効求人倍率が3.54倍(2023年5月時点。なお、全産業平均は1.31倍)と高止まり状態となっており、深刻な人手不足に現場の介護従事者は心身ともに疲弊します。
このような状況をふまえ、日本介護クラフトユニオン(NCCU、介護業界で働く仲間が結集した労働組合、約8万6000名)では、「2024年度介護報酬改定」へ向けた署名活動を展開するとともに、介護現場の声を直接届けるため、厚生労働省に対して要請を行っています。
”介護現場の声を届け、処遇改善につながる介護報酬改定の実現を”
川合議員、田村議員を交えた意見交換の様子
2023年7月28日、UAゼンセンと日本介護クラフトユニオンは厚生労働省を訪問。「2024年度介護報酬改定」に当たり、介護従事者に関してより一層の処遇改善の実現の目ざして要請を行いました。
冒頭、日本介護クラフトユニオンの染川朗会長が、本田顕子政務官に対して要請書を手交。その後、本田政務官との意見交換に先立ち、川合孝典・田村まみ両組織内参議院議員はともに「本要請で共有する介護業界の現状から、2024年度介護報酬改定における介護従事者の処遇改善が必要なことは明らか。また、日本介護クラフトユニオンでは、介護従事者の現場の声はもとより、現場の実態を表すさまざまなデータなども取り揃えている。引き続き、情報の共有などの連携を強化し、介護従事者の処遇改善につなげてほしい」と訴えました。
その後、染川会長は「現在、労働人口そのものが減少しているが、とくに介護業界は事業継続をあきらめざるを得ないような深刻な人手不足が続いている。今次賃上げ闘争では社会的な賃上げの機運のもと、各業種で大幅な賃上げが見られた。しかし、介護業界は新型コロナ感染拡大による厳しい経営状況に加え、公定価格ゆえに価格転嫁ができないという特徴から、他産業と比較して大きな賃金の差が生じてしまった。ここ2~3カ月は離職者も増加傾向が見られ、人手不足がさらに加速することも懸念している。ぜひ厚生労働省として対応を急いでほしい」と提起。
また、日本介護クラフトユニオンの村上久美子副会長は、「人手不足で新しい職員が入っても十分なレクチャーができないため、職員の質が低下している」「(法人判断で行われる)処遇改善加算の分配が不平等で不満」「ケアマネジャーの資格を取っても更新に多額の研修費用が必要で維持が大変」など、介護現場から寄せられた声に言及。そのうえで、村上副会長は具体的に、(1)介護報酬の引き上げ、(2)簡素で納得性のある介護報酬の設計と改定ルールの明確化、(3)「介護職員処遇改善加算」等の仕組みの再構築、(4)介護従事者の確保と定着のための施策の推進の4点を取り上げ、「介護業界の疲弊が継続すると、介護サービスの提供自体が困難になる可能性もある。こういった観点もふまえ、現場の声を軸に、さまざまなアプローチで介護従事者の処遇改善をはかってほしい」と求めました。
本要請を受け、本田政務官は「介護従事者の処遇改善はもとより、介護報酬の制度の簡素化などについて、本日いただいた現場の声をもとに、今後の対応を進めていきたい」と回答しました。