取引慣行に関する実態調査(2025)

取引慣行に関する実態調査
2025年2月
取引慣行の改善に向けて

フード連合・UAゼンセン合同調査「取引慣行アンケート」集計結果報告

目 次

はじめに

「食」を適正な価値で評価する社会の実現を目指しています

国民・消費者が「食」を通じて豊かで健康な生活ができるように、人の生命にとって欠くことのできない安全・安心な食料を安定的に提供し続けることが、食品関連産業には求められています。

フードバリューチェーンのなかで食品が生産者から消費者に届くまでの各段階において、それぞれが生み出した価値が公正・適正な価格として評価される取引を実現することが必要です。

安全で新鮮な食品素材
を作りたい

・安定して購入して欲しい

魅力ある食品を安全・
安心な状態で
お届けしたい

・品質は落とせない

・農家にも迷惑はかけられない

・値上げしたら取引がなくなるかも…

品質も時間も守って
お届けしたい

・運賃を上げられない

・ドライバーが集まらない

安全な食品を安心の
価格で提供したい

・欠品したら、お客様に迷惑をかけてしまう

・値段を上げたら、他店に負けてしまう

豊かで健康な食生活
を送りたい

・安全/安心は当たり前

・欲しいものを、少しでも安く買いたい

「食」の価値連鎖にゆがみが生じている

生活必需品である食品は、消費・価格ともに消費者の意向が反映されやすい傾向にあり、小売での熾烈な価格競争が、そこに製品を納入する食品物流や食品製造にしわ寄せされ、価値に見合った価格になっていない可能性があります。

このことが結果的に、それぞれの段階で働く者の労働条件に大きな影響を及ぼしている現状があります。

食品関連産業の賃金は相対的に低水準

全産業を100とした指数であらわしたとき、食品関連産業は、相対的に低水準になっています。

公正な取引関係の構築を目指した取組み

フードバリューチェーンのなかの食品製造業と流通・小売業との取引について、フード連合とUAゼンセンは2003年から連携し、取引の現場の課題である優越的地位の濫用行為の改善に向けた活動を進めてきました。その活動の一環として、フード連合とUAゼンセンが共同で取引慣行の実態を把握するために、営業を担当する加盟労働組合員を対象に、毎年9月~10月に「取引慣行に関する実態調査」を実施し、実際の取引現場での問題となり得る事例の発生状況を本冊としてまとめています。

この「取引慣行に関する実態調査」を基にし、食品関連の公正な取引に関わる省庁や小売業を中心とした業界団体に対して是正に向けた取組み強化の要請を行ないます。また、政党に対しても食品取引の実態を伝えることで必要な法律改正や政策等の検討に繋げます。これら要請を行なった組織のその後の取組みを注視しつつ、翌年以降の実態調査にて現場の改善状況の確認を行ないます。

①取引慣行に関する実態調査
2024年9-10月に実施した調査の結果
回答総数:4,615件(昨年:4,931件)
14の「問題となり得る取引事例」の発生総数:1,960件
②要請行動
・関係省庁
・業界団体
・政党
③実態の改善
・独占禁止法、下請法の執行、改正
・適正取引推進ガイドラインの周知、改訂
・優越的地位濫用事件タスクフォース
・下請けGメン
・個別の指導 等
翌年以降の取引慣行に関する実態調査で改善状況を確認

フード連合とUAゼンセンは、食品が生産者から消費者に届くまでのフードバリューチェーン全体で、それぞれが生み出した価値が公正・適正に付加されるように食品関連産業の取引慣行の健全化を図り、国民・消費者の豊かで健康な食生活の実現を目指しています。引き続き実態調査を実施していくとともに、様々な組織と連携し、改善に向けた取組みを力強く推進していきます。

調査の概要

調査目的
取引現場における問題となり得る事例を集約し、現場の声として公正取引委員会をはじめとする各方面へ伝え、改善を求める。
調査の方法
「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」をベースに、14の取引の種類・形態において問題となり得る事例の発生状況を確認した。
調査期間
2024年9月~10月
回答件数

回答総数:4,615件(昨年:4,931件)

14の「問題となり得る取引事例」の発生総数:1,960件

※1,960事例の内訳 フード連合:1,658件 UAゼンセン:302件

回答企業数
100社
※100社の内訳 フード連合81社 UAゼンセン19社
アンケート回答者の担当商材
担当商材
問題となり得る取引が発生していると報告された都道府県
北海道
50
青森県
9
岩手県
7
宮城県
17
秋田県
5
山形県
7
福島県
10
茨城県
10
栃木県
11
群馬県
12
埼玉県
29
千葉県
35
東京都
210
神奈川県
61
新潟県
15
富山県
2
石川県
3
福井県
5
山梨県
6
長野県
3
岐阜県
19
静岡県
30
愛知県
84
三重県
10
滋賀県
13
京都府
26
大阪府
128
兵庫県
46
奈良県
8
和歌山県
10
鳥取県
4
島根県
0
岡山県
32
広島県
34
山口県
3
徳島県
7
香川県
8
愛媛県
9
高知県
0
福岡県
94
佐賀県
5
長崎県
2
熊本県
8
大分県
5
宮崎県
8
鹿児島県
10
沖縄県
7
合 計
1,117

14の問題となり得る取引事例

独占禁止法や下請法、「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」を基にして問題となり得る事例、望ましい取引事例を整理しています。これらの事例は法令違反に該当するおそれもあります。

01
前提が異なる場合の同一単価による発注
大量発注を前提とした割安な単価の見積りを、その後の大幅に少ない発注数量の取引単価としても一方的に決められた。
02
包材(フィルム等)の費用負担
取引先から製造委託を受けて包材を調達したにも関わらず、販売不振により使わなくなった包材の代金を小売業者に負担してもらえなかった。
取引先の要請で包材のデザインを変更したにも関わらず、かかった経費を負担してもらえなかった。
03
合理的な根拠のない価格決定
取引先の特売期間に対応した通常より大幅に低い価格を、特売期間終了後も継続を求められ、一方的にその価格を押し付けられた。
協賛金の徴収という名目で、取引先が事前の相談なく伝票上で納品価格を勝手に引下げる操作を行なった。
04
原材料価格等の上昇時の取引価格改定
大幅な原材料価格高騰にあたり、資料を基に値上げ要請をしたが、納品価格を一方的に据え置かれた。
取引先からの急な発注に対応するため、人件費、物流費等のコストが大幅に増加したにも関わらず、従来の納品価格のまま据え置かれた。
05
物流センター使用料等の負担
合理的な根拠が示されることなく、著しく高額な物流センター使用料(センターフィー)やコンテナリース料を徴収された。
06
協賛金(リベート)の負担
販売目標の達成に見合って負担する協賛金を目標達成とは無関係に別名目で徴収された。
納得できる算出基準や根拠の明示がないまま、販売量とは関係なく、一律に毎月売上高の○%に相当する額の協賛金を徴収された。
07
店舗到着後の破損処理
どの時点で破損したか特定できず、小売業者から言われるままに返品や交換に応じざるを得ない。
破損による欠品を防ぐため、小売業者から予備の商品を無償で提供するよう要求され、買取りを求めても受け入れてもらえない。
08
短納期での発注、発注キャンセル
リードタイムが短く無理な注文に応えることを余儀なくされ、結果として見込み生産による余剰が発生した。
前日発注対応のため見込み生産を行なっているが、受注が少なければロスが生じ、受注が多ければ追加生産作業となり、人的コストが発生する。
09
受発注システム使用料等の徴収
取引先側が持つシステムの利用料に関する明確な説明がなく、受発注データ1行につき1~2円で徴収される。
10
物の購入強制(押付販売)
取引先の営業担当者から、前年実績を引き合いに出しつつ、季節商品の購入数量の報告を求められ、断れない。
11
従業員の派遣、役務の提供(不当な労務提供)
商品の搬入、陳列、棚卸し等、自社の直接の利益にならない業務を取引先で行なうために無償で働かざるを得なかった。
12
客寄せのための納品価格の不当な引下げ
取引先Aが、納品価格を下回る価格で商品を販売。別の取引先Bから、これを引き合いに、同種の商品の納品価格を引下げるよう一方的に要求され、断ることができない。
13
プライベートブランド(PB)商品をめぐる不利な取引条件の設定
PB商品の製造にあたり、ナショナルブランド(NB)商品と同水準の原材料の使用を求められるにも関わらず、取引先からNB商品より著しく低い価格を一方的に設定された。
14
不当な返品
メーカーが定めた賞味期限とは別に、取引先が独自にこれより短い販売期限を定め、その販売期限を経過したことを理由に返品された。
返品条件を取り決めていないのに、段ボールの軽度な汚破損商品、売れ残った商品、店舗改装時の商品入れ替えに伴い在庫となった商品等を返品された。

調査結果報告

14の問題となり得る取引事例の発生状況

総 括
優越的地位の濫用行為や食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドラインにおいて問題となり得る取引事例は1,960件発生している。
14の「問題となり得る取引事例」のうち、「協賛金(リベート)の負担」が242件、「店舗到着後の破損処理」が231件、「原材料価格等の上昇時の取引価格改定」が218件と件数が多かった。
「協賛金(リベート)の負担」では、負担額およびその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない、取引先の「経済上の利益」や、食品メーカーの直接の利益とならないと考えられる支払い要求が多数発生している。
「店舗到着後の破損処理」では、明らかに食品メーカー側に責任がないと分かっていても食品メーカーが負担するケースや、取引先の損失補填が疑われるケースも発生している。
「原材料価格等の上昇時の取引価格改定」では、取引先の「一方的な理由」で、納品価格への転嫁は受け入れられたものの必要な価格まで改定することができなかった、納品価格を据え置かれたといった事例が発生している。加えて、価格改定は受け入れられたものの販促費等の著しく不当な条件を付けられた、交渉の場につくことさえ拒否された、取引を停止・商品をカットされたといった事例も発生している。

01
前提が異なる場合の同一単価による発注
発生件数124件(構成比:6.3%)

代表的な事例

為替が激しく変動したのにも関わらず、価格改定を認めてもらえず同一価格を要求される。

納品先が関東、北海道、九州等で距離が違って運賃も異なるにも関わらず、同一単価である。

仕入れ枠の数量を限定して特別価格でご案内をしているが、その数量枠を越えた発注に関しても特別価格での納品を求められる。

単月での原価条件のはずが、条件を続行しなければこの商品の取り扱いはしないと脅しのようなことを言われる。

イベントのお土産用として通常より安価な見積を作成。しかし展示会の前に多大な数量で発注があり、それまで毎月実績が発生していたが、大量発注以降の1年間は発注が来なくなった。

取引先にとって都合の良い条件が、前提が異なる場合でも使いまわしされることで、食品メーカーに不利な状況が発生している。

02
包材(フィルム等)の費用負担
発生件数39件(構成比:2.0%)

代表的な事例

取引先の要求でデザイン包材に変更したが、デザイン代はメーカー負担かつ最低ロットに満たない数で終売となるので包材が余る。

取引先要請の包材デザイン変更時に版代の負担をしてもらえなかった。

先方の施策により包材へワンポイントシールを貼付することになったが、そのシール代についての負担の話が一向にされない。

年1回ギフト包装紙として約100万円を請求される。

取引先の都合によって発生した包材等の資材について、合理的な理由もなく食品メーカーが費用を負担するケースが発生している。

03
合理的な根拠のない価格決定
発生件数138件(構成比:7.0%)

代表的な事例

競合となっていない地域の店舗のチラシ価格を見て、「うちもやらせろや」と販売価格の要求と、それに見合った原価の要求を強いられる。

他の量販店が販売している当社以外が受託しているプライベートブランド(PB)・留型品の価格改定が行なわれていないことを理由に、当社受託品の価格改定が認められず一方的に赤字を被っている。また、商品終売にも応じてもらえない状況が続く。

何かミスをした場合にはペナルティと称して販売価格に対して10%の条件を支払うように命じられている(実際に別名目で支払っている)。

トラブルにより納品ができない状況が発生したため、他社商品への差替えを提案・依頼し、実際に差替えを行なったにも関わらず、納品停止期間の粗利補填を要求された。

地震の影響で需給逼迫となった商品の販促取り下げをお願いした際、ペナルティとして過大な損失補償を求められた。また、商談への参加禁止を命じられた。

食品メーカーとして誠実に対応しているにも関わらず、取引先の都合で不合理な条件を要請されている。
組合員の声
組合員の声
取引慣行アンケートより抜粋して紹介します
現在も卸売・小売業者の優越的地位の濫用が企業規模に関係なく多く存在しており、対等な立場での取引とは言い難い状況が続いている。ぜひ改善をお願いしたい。
食品業界においては常識とされているが、一般ではあまり考えられない要求が多いと感じる。慣例で済ませておくと不利益を被るところが今後増えてくると思う。
適正取引推進ガイドラインと逆向する得意先は、長い目で見ると衰退していく可能性をより強調して欲しい。
小売業とメーカーの立ち位置を見ると、消費者はメーカーが強い様に感じているかもしれないが、実態は小売業が圧倒的に強いのが事実であり、そういう背景・実態がもっと消費者にも伝わってほしいと思う。
取引慣行改善の取組みの結果はすぐに表れるものではないのは承知しているが、取組みの内容や活動自体がもっと各種メディア等で露出することで抑止力にもなると考える。本内容は広く社会的な問題ではないため世の中の関心は低いかもしれないが、食品メーカーにとっては死活問題にもなりかねないと思う。実情を広く周知していただきたい。

04
原材料価格等の上昇時の取引価格改定
発生件数218件(構成比:11.1%)

代表的な事例
<取引先の一方的な理由で、納品価格を据え置かれた>
132件

競合店での店頭売価を理由に、納品価格の改定を行なわない。取引先側の値入率を削って店頭価格を据え置く等の対応は行なわない。

この条件を対応しなければ、配荷店舗数を減らす・カットする等と優越的地位の濫用をされた。売価が108円になるような原価を提示したらカットすると言われ、原価を上げられなかった。

競合企業が改定されるまで改定しないという理由で価格改定をしない。競合企業の価格改定による売価上昇率までしか改定を行なわない。

競合企業の価格改定が確認できるまで改定しない、または作業が立て込んでいるから遅くなるとの理由で改定ができない。その結果、新旧の値差を卸から請求された。

メーカー側が公式文書で発信した期日に価格改定がなされることは極めて稀である。また、理由は諸々だが旧値対応を迫られることはしばしばある。「粗利が下がった」と言うが売価を上げる等の自社での工夫は無く、原価対応を求められ、対応させられた。

<納品価格への転嫁は受け入れられたものの、取引先の一方的な理由で、必要な価格まで改定することができなかった>
102件

売上の柱となる商品の価格改定の際に必要な価格まで改定できず、また交渉期間が長引いたため価格改定実施日も後ろ倒しとなった。また、販促条件の提示を求められた

価格改定の見積提示後、価格交渉があり、改定日が近づいていたこともあり、先方の提案を受け入れた。その後、価格を下げられるならもっと下げろとさらなる要求があり、根拠も無かったためゼロ回答したところ、『お前は頭がおかしい、もう信用できないし、会うことはない』等と人格否定を含めた暴言を受けた。その後はメールをしても何も返答がなく、価格改定も1ヵ月以上経つができていない。

他小売企業の売価に合わせて価格改定幅を圧縮させられる。また、競合企業の売価に合わせた上で値入改善を要求される。上記を対応しない場合は改定自体を先延ばしにされる。

先方方針として希望小売価格の上昇幅を超える納価の改定や、物流費や製造コストの上昇分の価格転嫁を認めないため、必要な価格まで改定できない場合がある。

価格改定時、競合他社より売価が高くなるという理由から値上げ交渉が難航し、一部商品の価格改定を据え置きせざるを得ない状況が続いている。複数メーカーが長年、同じように一部納価を据え置く形で対応しているため、仕方がなく対応しなければならない状況が続いている。

<価格改定は受け入れられたものの、販促費等の著しく不当な条件を付けられた>
38件

価格改定は実施するも、その結果として売上が下がるリスクに対して異常な販促費増を強要された。

改定時期の先送りや販促費での対応の他、必要な価格まで改定することができない事例は多い。

価格改定見積もり提出後の定番扱いの中止、ポイント販促を強制される。

<メール、電話、訪問等を避ける等交渉の場に着くことを拒否された>
32件

商談のアポイントをとらせてもらえず先延ばしにされ、「商談の時期が遅い」を理由に改定時期を1ヵ月遅らされた。

価格改定商談を「忙しい」との理由で後回しにされる。何ヵ月も前から申し入れをしていたにも関わらず、改定日直前に「上司の承認がおりていない、新たな指摘があった」との理由で改定日を遅らせる。

<取引先の一方的な理由で、取引を停止された>
11件

価格改定においては、こちらからの10月1日改定依頼を断固拒否された。そして、価格改定時に取引先の思う値でなければ、全取引停止と言われてチラシ販促等も一切拒否された。

当社改定率まで納品価格を上げると、先方の求める価格ではないため、商品が外される等の措置がある。

取引先の「一方的な理由」で、納品価格への転嫁は受け入れられたものの必要な価格まで改定することができなかった、納品価格を据え置かれたといった事例が発生している。加えて、価格改定は受け入れられたものの販促費等の著しく不当な条件を付けられた、交渉の場につくことさえ拒否された、取引を停止、商品をカットされたといった事例も発生している。

05
物流センター使用料等の負担
発生件数144件(構成比:7.3%)

代表的な事例

卸売店に対し、急なセンターフィーの引き上げ要求をされている。引き上げについては、物流費高騰の観点からあり得るが、引き上げ率や時期等が、普通ではない。

物流センターからの一方的なセンターフィー引き上げ要請に対し、納品価格引き上げを商品部へ提案するも、物流関係の人間と話をして欲しいとのことで単なるセンターフィー引き上げ要請となっており、商談が進まず。

時間帯指定、狭小スペースの間借り冷蔵庫の賃料が法外である。契約しているため致し方ないが、支払いを行なっている荷主も高すぎるとの認識を当社にも示している。

通年物流対策費として納価の1.0%を支払っていたが、事前の連絡なく突然、納価の1.5%の請求がきた。

利益率改善という理由だけで帳合手数料アップの依頼があった。他のメーカーは対応したという口実で強制的に上げさせられた。

過去からの慣習によって支払っている物流センター使用料(センターフィー)について、物流費高騰のなかで不合理で納得度の低い上昇が発生している。

06
協賛金(リベート)の負担
発生件数242件(構成比:12.3%)

代表的な事例

販売の達成状況に関わらず2%~3%徴収されている。また取引先の人件費の高騰を理由に引き上げの要求があった。

所有する実業団チームへの協賛金や新店協賛金等について。毎年や毎回支払いがある等、通例ならまだしも都合が悪くなると要求してくる印象がある。

取引先の利益が足りないので、「○月の条件に補填を上乗せしてほしい」と言われた。

店舗のリニューアルの際、協賛金として数十万円を要求される。協賛金を出さない場合は取引停止になる。

先方創立の周年協賛として何千万円規模の協賛金を要請された。断るのであれば取引縮小を匂わす発言をされた。

決算時に理由のない協賛金支払いを要求され、対応しない場合、取引上の何らかの不利益を科せられる。

企画代や販促を取るために異常な額の協賛金を強要される。また、チラシ原稿の確認をメーカーにすべて任せ、ミスが発生した場合はペナルティとして追加協賛金を強要される。

協賛金という名の新店応援10万円・リニューアル4万円という協賛金が発生している。自社商品がチラシに入るわけでもなく、むりやりメーカーに「出すのが当然」のように要求がある。使途不明金は今すぐにやめたい。

何かにつけて協賛金の要求がある。新店や改装時の協賛金、新商品導入金、月間POP代、ポイント代等。いずれも明細や理由が明確でなく、今まで払ってもらってきたからという理由だけで払わされている。拒否することができない。

新店や改装時に什器協賛(コーナー棚代金)を求められる。支払いができなければその店舗での取り扱いが無くなる。

負担額およびその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない、取引先の「経済上の利益」や、食品メーカーの直接の利益とならないと考えられる支払い要求が多数発生している。

07
店舗到着後の破損処理
発生件数231件(構成比:11.8%)

代表的な事例

商品納品後、数日~10日ほど経過した段階で商品のカビや真空漏れの指摘を受ける。納品して開封時にカビが発生していればメーカーの責任だと思うが、納品後数日~10日でのカビは店舗での管理だと思われる。

明らかに店舗内で在庫破損なのに、段ボール外箱破損潰れ等での返品依頼があり、最終的にたどり着くのはメーカーである。

納品後数日たってから、よく見たら外段が凹んでおり、開封したら数個の角が凹んでいたため、販売できないから返品したいと言われた。返品は受けないので処分販売せざるを得ない。

店頭で中身が溶けたことによる返品依頼。納品センターへは保冷配送で対応しているので、配送している段階での中身溶けは考えにくい。

物流過程のどこかで壊れたのか店舗到着後に壊れたのかは不明だが、割れた製品の返品対応は日常化している。

明らかに食品メーカー側に責任がないと分かっていても食品メーカーが負担するケースや、取引先の損失補填が疑われるケースも発生している。

08
短納期での発注、発注キャンセル
発生件数169件(構成比:8.6%)

発生状況
※複数回答
①取り決めたリードタイムよりも短納期での発注
100件
②確定後の一方的な数量変更(増減)
75件
③確定後の一方的な発注キャンセル
58件
代表的な事例

事前にリードタイムを伝えているにも関わらず、ルールを逸脱した発注をされ、対応できない場合、「企業努力が足りないからだ」と欠品ペナルティを要求される。

どう考えても間に合わないスケジュールでも「どうにかしろ」と脅してきて無理やりスケジュールに合わせている。そのせいでメーカーとしては残業や休日出勤をせざるを得ない。

販促が直近で導入となり、急な特売の連絡がある。店舗へ納品までにかかる基本日数よりも短い期間で納品依頼が来ることがあり困る。

予約受注品等締切を守ってもらえず事前に確保するように指示がある。数量が確定する前に見込みで予約するため余りが出るが、その分は納品されず別企業等の販売先を探す必要がある。予約品の発注期限は常に守られていない。何度も打診をしたが当社だけ早いのはおかしいとのことで取り合ってもらえない。

季節商材の急な追加依頼と、急なキャンセル。通常取引量の1ヵ月分以上の数量追加を依頼された翌週、追加された数量以上のキャンセル依頼を受ける。最終的に賞味期限までに消化しきれない数量の在庫が発生し、拡販を依頼するも納品価格の値下げを要請される。最終的に値下げ分と処分費用を合わせ700万円以上の損失が発生した。

リードタイムを無視した取引先の無理な要求への対応や、急な発注キャンセルによって、コスト負担や廃棄が発生している。

09
受発注システム使用料等の徴収
発生件数53件(構成比:2.7%)

代表的な事例

こちらはPOSデータを必要としていないにも関わらず、先方のPOSを見るための金額として月6万円を支払っている。

先方が新たに導入するシステムに対して、メーカー側にはメリットがないのに、メリットがあるという名目で追加の使用料が取られる。

謎のシステム使用料がとられている。

名目や算出根拠が不明瞭なシステム使用料を払うことを余儀なくされている。

10
物の購入強制(押付販売)
発生件数103件(構成比:5.2%)

代表的な事例

10,000円するてっちりセットの購入を強制された。

カレンダーの購入を断ったら商談に呼ばれなくなった。

年末商材やチケット等の購入依頼。断ると役職上位者から連絡が来る。

季節ギフト(恵方巻、クリスマスケーキ)を購入しないと新商品が取り扱いされない。

先方のクリスマスケーキや土用の丑の日の鰻購入等、行事ごとに年4回程度購入強制がある。また、バイヤー分という名目で実際にもらえない分も購入させられている。

特に必要のない商品を、強制的に買わされるケースも発生している。取引先との関係性を考えると断りづらい状況が依然としてある。

11
従業員の派遣、役務の提供(不当な労務提供)
発生件数162件(構成比:8.2%)

頻度
日当・交通費に関する取り扱い

①日当や交通費の条件は所属会社と取引先にて取り決められており、請求している

16件

②日当や交通費の条件は所属会社と取引先にて取り決められているが、請求はしていない

25件

③日当や交通費の条件は所属会社と取引先にて取り決められているか不明だが、請求はしている

3件

④日当や交通費の条件は所属会社と取引先にて取り決められているか不明であり、請求もしていない

99件
代表的な事例

8時から開始し、作業完全終了までの改装業務の強制。しゃがむことができないスペースでの作業の強要があった。作業スペースの確保をお願いした際に小売店社員に激怒される。棚板を投げられる。

度重なる店舗の改装業務に半強制的に呼び出される。改装業務は週3日を基本とし、参加しない場合はメーカーにとって不利になるような事態が発生する(棚から商品が落とされる等)。改装業務に週3日程時間を取られ、本来の仕事ができない状況が続くことが多い。また、時間についても、朝7時集合や度重なる休日出勤、労働時間外の労働を余儀なくされている。

人手不足を理由に、年々労務提供依頼が増えており、営業現場が疲弊する要因になっている。早急に改善を願いたい。

応援費用を請求しないことの覚書を結ぶことになっている。また、実際の応援よりも少ない日数の覚書になっている。

春夏と秋冬にメーカーが棚替応援を実施しており、半期に60店舗程度、年間120店舗ほど応援を行なっている。これに対して交通費等は一切支払われていない。改めて棚替えは「チェーンが行うこと」という認識を持っていただきたい。

改装や、新店オープンは当たり前にほぼ終日拘束される。会社からの距離も関係ないので、遠くても当たり前。商品の陳列だけでなく、棚の高さを変える作業や、先方の備品を使って棚を作る作業が発生している。また、陳列の際に破損したものはメーカー担当者が経費で買い上げることが当たり前とされている。

日当も交通費も支給されていない。回数も多いため断ったら商談に呼ばれなくなった。

取引先にて自社の直接的な利益にならない労働が発生している。中には、年間61回以上も他社で働かされており、疲弊している。危険な作業や過酷な環境での労働も強いられている。日当や交通費等の請求は食品メーカーの立場では「しない」、「できない」のが実情。

12
客寄せのための納品価格の不当な引下げ
発生件数138件(構成比:7.0%)

代表的な事例

得意先都合で勝手に特売を組み、協賛しないと二度と特売はしない等と言われ、値下げせざるを得ない状況にされている。また、それで余った商品はメーカーの管理不足と言われ、費用を持たない。

新店オープン時、創業祭時等に客寄せ用に、任意の商材を著しく市場価格より売価を下げて販売。それに伴う粗利補填策を要請される。

古くからある商慣習で、新店オープンの際等は通常ではありえない様な見積り対応を求められる。

前年と同様の納品価格では販促が入れてもらえず、前年以上に下げなければ取組んでいただくことができない。競合他社も泣く泣く対応していることもあり、受けざるを得ない状況。価格改定後も納品価格の引下げを要求されるため、意味がない。このままいくと10年後には0円になる。

売れ筋商品を競合他社、ネット売価より安価に設定すると一方的に決められ、原価改善を不当に要求された。

行き過ぎた納品価格の引き下げや、安価な売価の補填要求が常態化している。

13
プライベートブランド(PB)商品をめぐる不利な取引条件の設定
発生件数36件(構成比:1.8%)

代表的な事例

プライベートブランドだから在庫や生産管理の責任は取引先が取らなくてはいけないにもかかわらず、得意先都合で商品を発注し、余ったらメーカー責任になっている。

複数のプライベートブランド商品を製造している中で、ある商品で原料高騰を理由に価格改定を提示し、その結果他社に切り替える判断をしたにも関わらず、企業の取組み姿勢が弱いと主張され、終売となったプライベートブランド商品の売上減少分を、他のプライベートブランド商品で取り返す販促費用を要求される。

プライベートブランド商品を発売するにあたり、同カテゴリーの当社商品について、納品価格を下げなければカットすると通告され、納品価格を下げざるを得なかった。

プライベートブランド商品に関連して様々な問題が発生している。

14
不当な返品
発生件数166件(構成比:8.5%)

返品の
発生状況
※複数回答

①取引先が独自に納品期限を定め、その納品期限を経過したことを理由に返品、納品を拒否された

42件

②取引先が独自に賞味期限より短い販売期限を定め、その販売期限を経過したことを理由に返品された

47件

③あらかじめ返品の条件を取り決めていないにもかかわらず、軽度な汚破損商品を返品された

38件

④取引先の一方的な都合により、売れ残り商品や在庫となった商品を返品された

100件

⑤その他の理由により返品された

28件
代表的な事例

賞味期限1/3ルールが設定されており、1/3を過ぎた商品は返品対象となる。段ボールの軽度な凹みやPPバンドの軽度な食い込みでも返品される。

賞味期限の1/3を超えると納品拒否される。棚割カットの際に卸店在庫の削減に非協力的。当該企業の販売規模が非常に大きいため、卸店は別の売り先で捌き切れず、結果的にメーカーに返品を依頼せざるを得ない。

取引先が独自に賞味期限より短い販売期限(残存賞味30日以上)を定め、その販売期限を超過したこと(納入した商品の賞味期限が30日未満であった)を理由に返品された。

納品した商品の賞味期限がまだ1年以上残っていたが、賞味期限残期間が先方の許容切れという理由で返品依頼を受け、対応せざるを得なかった。

定番採用いただいている商品について、賞味期限切れ店頭在庫を卸経由で返品された。こんな企業、他にない。

ギフト販売等毎度どこの得意先も在庫調整をお願いしているが、欠品リスクを避けるために多く発注し、終了後に返品してくる。メーカーに返品する、返金してもらうのが当たり前という認識を、現場ではどこのチェーンを担当しても感じている。

異物が発生したロットをバイヤー立ち合いのもと全量検品を行った。2日間かけて行なった後、全量使用しないと言われ、弊社で廃棄処分となった。問題ない品質の物がほとんどだが、少しでも異物が発生したら返品は納得がいかない。

取引先の都合や合理的な理由の無い返品の負担を食品メーカーが被っている。また、食品ロス削減の観点からも改めるべき商慣習である「1/3ルール」による返品は納品期限、販売期限の双方で未だに発生している。

※1/3ルールとは
食品メーカーと小売店の間に存在している商習慣です。食品には「おいしいめやす」として賞味期限が設定されていますが、最初の3分の1の期間にメーカー・卸売業者は小売店に納品しなければならない、次の3分の1の期間に、小売店が商品を店頭に並べておく、といったように慣習的に期間を決め、期間を過ぎた商品は廉価転売されるか、廃棄されてしまいます。

労務費の価格転嫁に関する取引の状況

人件費(労務費)上昇を理由とした価格改定の取引で問題が生じたことがある
87人
2.2%
人件費(労務費)上昇を理由とした価格改定の取引で問題は生じていない
1,657人
42.4%
人件費(労務費)上昇を理由とした価格改定の取引を行っていない
2,165人
55.4%
問題の
発生状況
※複数回答

①人件費(労務費)の納品価格への転嫁を求めたが、協議のテーブルにつくことを拒否された

12件

②人件費(労務費)の納品価格への転嫁を求めたことを理由として、取引を停止する等不利益な取扱いをされた

11件

③人件費(労務費)の上昇の根拠として公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額や上昇率等)を用いたが、交渉は円滑に進まなかった

37件

④その他

9件
代表的な事例

社内人件費、原材料費等の上昇に関する根拠を示した価格改定について、競合他社の販売価格を理由に価格改定に応じない。

全ての企業で賃金が上がっているので、どこも苦しいとの理由で拒否された。

先方が原材料や資材価格以外の製造・物流コスト上昇分の転嫁を認めない方針のため、その分をメーカー側が対応している。

他社へ切り替える旨伝えられ、退室を余儀なくされた。

先方は人件費の上昇は企業努力で解決すべきとの姿勢で、交渉が難航している。

半数以上はそもそも労務費の転嫁に関する価格交渉を行なっていない。指針で推奨されている公表資料を用いた交渉を行なうも、難航している実態がある。

食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドラインの周知状況

ガイドラインの策定から約3年が経過しているが、ほとんどの現場担当者にはまだ内容が知られていないという状況が改善されていない。

問題となり得る取引の要請を、受けざるを得なかった理由

営業担当者としては今後の取引に不利な影響があることを懸念して断ることができない状況がある。また、他の食品メーカーが同様の対応をしているために応じてしまう状況もある。食品業界全体で公正な取引を実行する必要がある。

取引慣行の改善状況

主な意見

この調査で正当で公平な取引が広がることを祈っている。

以前から調査に参加しているが、意見が生かされている実感がない。調査のみに留まらず、現場で改善が感じられる様に動いてほしい。

優越的地位における強制的な要求は改善されつつあるが、まだまだ横行していると認識している。特に卸企業や零細メーカーは断りたくても断れない立ち位置にあることが多い。業界が団結して改善を継続していただきたい。

メーカーに対する対応姿勢(言葉遣いや態度)の良くない取引先の担当者はまだまだいる。チェーン展開をしているような取引先では教育されている場合が多く、ほぼ改善がされている。しかし小規模の取引先になるとその教育がされていないようで、弊社営業担当者の大きな負担になっている。

個人名を出してもいいので、今すぐに改善をはかって欲しい。今すぐにでもこのような状況をなくさないと、メーカー側が疲弊してしまい、いつか精神を病む人間が出てもおかしくない状況だと思う。

小売り側の立場が強く、メーカーはいつも弱い。メーカーが潰れれば小売りにも商品を提供できなくなることを理解してほしい。今でも精神論で「どうにかしてくれ」とか「なんとかできるだろ」みたいなことも多い。だから人材も増えないし若手離職が増えている。

14の問題となり得る取引事例のうち1つでも「問題あり」と答えた人のうち、64.8%が「変化は感じない」と答えており、4.0%は「悪くなっている」と答えている。

現場で働く者が実感を得られるよう、公正な取引慣行の実現に向けた取組みを強化、徹底する必要がある。