労働組合運動は、18世紀後半から始まった産業革命によって大量に発生した産業労働者が自らの権利と労働条件を闘いとるなかで発展してきたものである。現代では、労働組合は自らの労働条件を高める自主的な団体としてその権利が法的に保障され、世界の国々で国民生活の向上と社会的公正を実現していくうえで、政治的、経済的、社会的に大きな役割を果たしている。
日本の労働組合運動は、1912年に結成された友愛会を源流とする長い歴史をもち、戦後のゼロからの再出発のなかで、労働諸条件の向上、完全雇用の達成、民主主義の実現、福祉の充実などを求めて闘ってきた。
私たちの運動の原点は、働く者すべてが人間らしく、心豊かに生きていくことのできる社会を築きあげることにある。今日では、わが国の経済規模は世界でも有数のものとなり、1人当たりの国民所得は世界のトップ水準になったが、経済全体の豊かさが生活の質に結びついていないことや、社会的公正が十分配慮されていないという問題を抱えている。政治、行政、経済システムの硬直性や、急ピッチで進む高齢・少子社会への対応も課題として指摘されている。
国外に目を転じると、冷戦構造の終結によって、大きな流れとして平和を求める人類の願いがかなう方向に進みつつあるが、一方では地域紛争、民族紛争、テロの多発、開発途上国の貧困といった問題も依然として解決せず、不安要因は持続されている。
労働組合の目的や活動は一筋の糸のように歴史を貫くものがあるが、同時に、その時々の時代の要請にも応えていくものでなければならない。今日、労働組合の組織率の低下による力量の低下、組合員の組合離れなどが指摘されているが、こうした問題にも的確に対応して、新たな課題に挑戦していかなければならない。私たちは、先人が築きあげてきた運動や理念を大切にしながら、つねに時代の変化を見据え、勇気と誇りをもって改革の実践にあたる。