運動の基調

1.社会の進歩、発展のために

 私たちは、労働組合運動が果たすべき社会的役割がきわめて大きいことを自覚し、自由・人権・民主主義が保障され、公平・公正な社会、内外に開かれた透明な社会、生活者を優先する社会、友愛や連帯の精神が生かされる社会の実現へ向けて全力を注ぐ。

 私たちは、社会正義を大切にし、開拓者・改革者としての自覚を忘れることなく、世の中の一切の不公正や社会悪に対し、率先して挑戦する。

2.産業民主主義と参加型労使関係の前進のために

 産業は国民生活向上のためにあるのであって、産業のために国民生活が犠牲になることがあってはならない。私たちは、産業民主主義の原則にたって、労働条件と労働者の生活文化を高め、経済的、社会的地位の向上と発展に力を注ぐ。

 私たちは、労使関係を階級的対立や一心同体で捉えるのではなく、労使対等の原則にたち、相互の自主性を尊重した労使関係を確立する。

 私たちは、産業・企業の健全な発展が、雇用の安定と労働者生活の向上、社会の進歩と経済の繁栄につながるよう、生産性の向上という観点では協力し、その公正な成果配分を求める。

 企業は市場経済の中で、競争しながら利潤を追求していく組織体であるが、同時に、社会の一員としての役割と責任を果たす必要がある。私たちは、労働組合の立場から経営への参加と発言を強めるなかで、健全な企業経営とその責任についてのチェックを行うとともにパートナーシップを基調とした労使関係を構築する。

3.生活者優先の政治体制実現のために

 私たちがめざす社会は、政治的には議会制民主主義を基本とし、経済的には市場経済原理が生かされ、自由と人権が保障され、公平・公正が貫かれ、働く者や生活者が優先される社会である。そのため住宅、福祉、環境など生活者重視の政策と、中央から地方への分権による活力ある地域社会の実現をめざす。同時に、経済的豊かさだけではなく、思いやりや社会への貢献が尊重される社会をめざす。

 冷戦構造の終結によって、かつてのイデオロギー中心の政治から、政策中心の政治が求められるようになった。私たちは、国内においてはゆとりと豊かさが実感できる社会を求めつつ、広く世界にも目を開き、国際社会の一員としての役割と責任を果たし、環境にも配慮しながら地球全体の豊かさを求める政治体制を求めていく。他方、人格を否定し、体制に人間を屈従させる全体主義とは毅然として対決し、闘う。

 こうした政治・経済・行政のシステムを実現していくために、私たちは主体性を堅持した上で、理念、政策を同じくする政治家・政党への支持、協力、提携を行うとともに、共通の考え方にたつ諸団体、友誼組合や地域社会とも協力して、政治へ参加していく。

4.世界の平和と繁栄実現のために

 私たちは、人類の悲願である世界平和実現のために運動する。世界平和の基礎は、民族の完全な独立が保障され、自由と人権が守られ、地球上の富の偏在をなくし、すべての国の国民生活を安定させることにある。

 冷戦構造は終結したが、地域、民族紛争、テロは残っており、国際的緊張がなくなったわけではない。私たちは、不戦と世界との共生を誓った「日本国憲法」の精神をふまえ、国連を中心とした世界の安定と平和のために貢献し、わが国がアジアの近隣諸国をはじめとした世界の国々から、敬意と信頼をもたれる国になるよう働きかける。

 また、国際労働運動や非政府組織(NGO)活動などを通じて、私たちの手でできる国際貢献運動も積極的に進める。

5.友愛と連帯の精神が満ちあふれる社会づくりのために

 働く者すべてが人間らしく、心豊かに暮らせる社会を実現するためには、友愛と連帯の精神が満ちあふれる社会にしていくことが必要である。それは、人と人がいたわりあい、助け合う社会である。私たちは、ボランティア精神を大切にして、仲間同志の助け合いや共済活動を通じて、安心して暮らせる制度を充実させるとともに、国の内外において困っている人、助けを求めている人たちに支援の手を差しのべる活動を進める。