川合議員 齊藤大臣

質疑を行う川合孝典議員(左)と答弁する齋藤法務大臣(右)

 2022年11月17日、川合孝典組織内参議院議員は法務委員会で質疑を行いました。法務省では葉梨康弘衆議院議員(自民・茨城3区)が法務大臣を辞任し、新たに齋藤健衆議院議員(自民・千葉7区)が法務大臣に就任しました。この間も川合議員は一貫して技能実習生等の外国人労働者を巡る課題の解決に力を注いでいます。

 

”共生社会の実現のため、在留外国人の実態把握を”

 

 今回の法務委員会のなかで、最初に川合議員は新任の齋藤法務大臣の所信に関して質疑を実施。齋藤大臣が所信において、外国人との共生社会の実現のために解決しなければならない課題の一つとして、「退去強制手続きをより一層、適切かつ実効性あるものとするための整備」を挙げていることに言及し、「多くの在留外国人が失踪している状況に関し、表面的な事象のみに捉われず、彼らが失踪を選択せざるを得ないという本質的な原因にしっかりと向き合い、出入国管理行政に当たってほしい。この部分が改善されなければ、いつまでも同じ問題を繰り返す危険性がある」と訴えました。

 また、川合議員は質疑の過程で、収容施設における長期収容者の属性などについて、法務省ならびに出入国管理庁が実態を把握していない点を指摘。「失踪者や収容者の在留資格比率など、実態を把握することを共生社会の実現につなげてほしい」と、在留外国人に関して実態把握をする必要性を強調しました。

 これに対し、齋藤法務大臣は「今後、より一層、ボーダーレス化が進展するなかで、ご指摘の点もふまえながら、ルールに則る適正な受け入れ、ルールに反する行為への厳正な対処を両立させ、共生社会の実現へ向けた取り組みを進めていきたい」旨、答弁を行いました。

 

技能実習を巡る課題解決へ向けた制度の見直しを求める

 

 続いて、川合議員は技能実習制度に関して質疑を行いました。具体的には、厚生労働省が技能実習制度の目的を「わが国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展をはかっていくため、技能、技術、または知識の開発途上国等への移転をはかり、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力すること」と定義していることに言及。一方で、国際人材研修機構が実施した調査を引用し、団体管理型の技能実習において、50.4%%以上の技能実習生が従業員数10名未満の企業で働いている点を明らかにしつつ、「人手不足に苦しむ中規模・小規模の事業者にとって、技能実習制度が労働力確保の方策として活用されている実態がある。この目的と実態の間にあるかい離が技能実習生に賃金などの処遇面で不満を生じさせ、結果として失踪などにつながっていると考えられる。この視点から法務省として制度を見直す議論を進めるべき」と訴えました。

 川合議員の訴えに対し、齋藤大臣は「この目的と実態のかい離については、古川禎久元法務大臣のもとで課題と論点が整理された。今後、有識者会議を設置するので、そのなかで多角的な議論をしていきたい」旨、回答をしました。

 

「特定技能」増加もふまえ、労働条件改善、差別解消の取り組みを

 

 さらに、川合議員は「特定技能」外国人受け入れに言及。とりわけ、今後、入国の増加が見込まれる特定技能の「2号」に関しては業種が限られる一方、期限なくわが国での就労が可能となる点を取り上げました。そのうえで、SNSなどが発達した現代において、失踪や処遇面での不満が拡散されることで、わが国の国際的な評判が毀損される危険性に危惧を示すとともに、「『特定技能』による入国者の増加が見込まれるなか、労働条件などの問題を改善していく必要がある」と強調しました。

 加えて、前回の委員会に引き続き、技能実習制度において実習先(=受け入れ企業)と利害関係のある組織が監理団体となっている実態にふれ、「受け入れ企業の選定において賃金支払い能力を基準とするなどの対応が必要」と要請しました。

川合孝典議員が質疑で引用した外国人の差別に関する統計資料。(出典:出入国管理庁「令和3年度 在留外国人に関する基礎調査」)

 川合議員の要請に対し、齋藤大臣は「ご指摘の点もふくめて、有識者会議での議論を進めていただきたい」旨、回答しました。

 最後に、川合議員は有識者会議の議論のなかで取り上げてほしい課題として、技能実習生等の外国人労働者に対する差別を提起。「偏見などにもとづく不適切な行為や人権侵害に当たる行為など、さまざまな差別が発生している現状がある。諸外国から厳しい目も向けられているが、外国人労働者の受け入れ、共生社会の実現へ向けて、この問題の解決をはかってほしい」と求めました。

「技能実習」と「特定技能」

 「技能実習」と「特定技能」はともに在留資格(=外国人がわが国で滞在・生活するために必要な資格)。「技能実習」は技術や知識を企業等で働きながら習得し、それをつうじて開発途上国等の経済発展を後押しすることを目的としている。一方、「特定技能」は国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする。特定技能の認定に当たっては技能水準や日本語能力水準(2号は不要)の試験が行われる。特定技能には1号と2号があり、1号は在留期間に上限があり、最長5年まで、家族の帯同も認められていない。一方、2号は在留期間に上限はなく、一定の要件を満たすことで、家族の帯同も認められる。

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