企業規模間の格差には価格転嫁の実現が急務
各自治体における取り組みの必要性を提起する田村議員
UAゼンセンは政策・制度の実現を目ざして、国会・地方議会の各組織内・準組織内議員が、さまざまなテーマについて議論する情報交換会を適宜開催しています。2024年10月31日、11月5日の両日には川合孝典、田村まみ、堂込まきこ組織内参議院議員および組織内・準組織内地方議員ら合わせて26名の出席のもと、労務費の適正な価格転嫁の実現に関する情報交換会(Zoom)を開催しました。
情報交換会の冒頭、川合孝典組織内参議院議員は「中小事業者を含め、日本全体で労務費の価格転嫁を推進するためには、政府と自治体との連携が重要。引き続き、各自治体における生の声を政府に届けていく」と述べました。また、田村まみ組織内参議院議員は「これまで国会において、何度も労務費を含む価格転嫁の重要性を指摘してきた。各自治体における実感を共有いただき、それを価格転嫁の実現につなげたい」と提起。さらに、堂込まきこ組織内参議院議員は「中小事業者に政府の取り組みをていねいに知らせる必要がある。各自治体の実態を政府に訴えていく」と語りました。
続いて、UAゼンセン製造産業部門の髙橋義和副事務局長が「価格転嫁の状況等に関する調査」の結果を報告。髙橋副事務局長は調査結果をふまえ、「過去2年間において高水準の賃上げが実現した一方で、企業規模間の格差が拡大している。日本経済全体が賃金と物価の好循環のもとで成長していくためには、中小事業者が賃上げ原資を確保できる環境づくりが重要。そのためには、労務費の価格転嫁を実現する必要がある」と強調しました。
加えて、本情報交換会では、毎年、UAゼンセン総合サービス部門とフード連合(食品関連産業の労働者が集まる産業別労働組合。連合加盟。組合員は約11万名)が共同で実施している「取引慣行に関する実態調査」についても共有。総合サービス部門の山口洋平、羽賀潤一郎両執行委員は、「食品は生活必需品であり、消費者の意向が強く反映され、価格転嫁が進みにくい状況がある」と指摘。そのうえで、組織内・準組織内地方議員と連携して地方自治体や関係省庁の地方窓口に対する要請を行う必要性を提起しました。
”労務費の適正な価格転嫁が実現できる環境づくりを”
価格転嫁推進に関して各自治体における取り組みの共有した
続いて、各報告をふまえ、出席した組織内・準組織内地方議員らで情報交換会を実施しました。このなかでは、「商工会議所が『価格転嫁セミナー』を開催したが、参加者が少なかった」(四日市市)や「四半期ごとに実施する事業者向けアンケートでは『全く転嫁できていない』という声が多い状況」(荒川区)、「経営支援のためのワンストップ窓口を設けているが、価格転嫁に関する直接の相談の件数は少ない」(三島市)といった各地域の実態が共有されました。
一方で、鈴木龍雄準組織内東村山市議会議員からは、同市が12月の議会での策定を目ざし、議論を進めている「公契約条例」に関する報告がありました。本条例には、適正な取引価格の明示や通報があった場合に市が強制的に契約内容を調査し、取引相手を指導できる条項が盛り込まれる見込みです。報告者の鈴木議員は、「二重、三重と下請け構造が多層化すると、市としても契約内容やその適格性を把握しにくくなる。市が取引業者の通報を受け付ける形を取ることで、市が構造を把握し、是正指導をしやすくしている。各自治体でも、規模や人員配置に合った形で『公契約条例』を検討してほしい」と期待を寄せました。また、水村篤弘準組織内埼玉県議会議員は、中小企業診断士といった専門家による無料の伴走型支援や好事例を掲載した事例集の作成・配布(11月完成・配布予定)といった取り組みを報告し、共有しました。
UAゼンセンは引き続き、労務費の価格転嫁を実現し、中小企業が賃上げ原資を確保できる環境づくりを目ざし、取り組みを進めていきます。