質疑を行う田村まみ議員(右)と答弁する加藤大臣(左)
2022年11月8日、田村まみ組織内参議院議員は10月27日に引き続き、加藤勝信厚生労働大臣に対し、厚生労働委員会で質疑を行いました。
社会保険の適用拡大とともに、健康保険組合への財政支援の議論も
冒頭、田村議員はいわゆる「収入の壁」に関して、本年10月から従業員数101人以上の事業所で働く短時間労働者に社会保険が適用されたことに言及。この適用拡大に伴い、新たな被保険者に各種給付を行うことで健康保険組合の負担が増加する点から、今後、適用拡大の検討を進める過程においては、合わせて健康保険組合への財政支援も検討すべきと訴えました。
これに対し、厚生労働省の佐原康之保険局長「社会保険の適用拡大に伴い、財政的な負担が増加する健康保険組合については、今後とも必要に応じて対策を検討していきたい」と答弁しました。田村議員は「業種によっては新型コロナ感染拡大の影響から、赤字決算の健康保険組合もある。財政的な支援などを講じることで、健康保険組合を守ることは国民皆保険制度、引いては労働者の健康を守ることにもつながる。適用拡大の議論を進めるに当たっては、引き続き状況を注視してほしい」と要請しました。
職場における「更年期症状・障害」対策へ向けて
その後、田村議員は「適用拡大に関して、実態として就業調整などの当事者は女性が多く、適用拡大を進めることは職場における女性活躍推進や男女間賃金格差の解消などにもつながる。一方、いわゆる『収入の壁』などが是正されるなかで、女性の労働時間が延びることを考えると、更年期症状・障害を含め、より一層、職場における健康対策が必要となる。労働者の安全衛生について事業者が取り組む際の指針となる『労働災害防止計画』(現在、第14次の策定について議論中)に、更年期症状・障害を含めた健康対策を盛り込むべき」と訴えました。
これに対し、加藤勝信厚生労働大臣は「更年期障害等の女性の健康課題への対策は重要だと認識している。現在は各都道府県に設置した『産業保健総合支援センター』が窓口となり、さまざまな支援を行っている。引き続き、ここを中心に取り組みを進めていきたい。また、更年期障害等について『労働災害防止計画』に更年期障害そのものを盛り込むことは難しいと考えるが、これまで実施した調査・研究のデータを反映させたい」旨、答弁しました。
加藤大臣の答弁を受けて、田村議員は「さまざまな報道で更年期障害等が取り上げられると、厚生労働省が提供する情報サイトへのアクセスも増えるが、その後は減っていくという実態がある。このことから、更年期症状・障害に関しては、まだ厚生労働省としての周知が足りていないと考えられる。また、更年期症状・障害がメンタル不調につながることは周知の事実であり、『労働災害防止計画』にはメンタルヘルス対策の項目も盛り込まれている。さらに、本計画は女性の少ない職場である製造系の事業者の注目が大きい。更年期症状・障害の本計画への明記は男女ともに職場における対策を考えるきっかけにもなる。これらの観点から、更年期症状・障害の本計画への明記を検討してほしい」と重ねて求めました。
「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画のこと。現在は 2018 年2月28日に策定され、同年3月19日に公示された第13次の「労働災害防止計画」の期間中。同第13次計画は2023年3月が期限となっているので、第14次の計画策定へ向けた議論が進められている。
介護分野の処遇改善で人手不足解消を
続いて、田村議員は加藤大臣が大臣所信で言及した「人への投資と成長分野への円滑な労働移動」に関して質疑。「これまでの政府の議論を見ると、DX(=デジタルトランスフォーメーションの略。情報通信技術を活用し、社会全体で人々の生活をより良いものに変革すること)などのデジタル人材が中心となっており、介護事業は成長産業として捉えられていないように感じる。また、現在の介護人材の確保は求職支援に留まっていることも、福祉・介護業界への労働移動が進まない原因にあると考えられるので、なんらかの新しい対策が必要なのではないか」と提起しました。
これに対し、加藤大臣は「デジタル分野に限らず、介護分野も含めて、求職者に希望される職場にしていくことが重要であり、そのために必要な対策を進めていく。2022年からは介護分野について職業訓練から就職までの一体的支援も実施している。加えて、他分野と比較した賃金面での格差是正も引き続き行っていく。処遇改善は介護保険料の上昇にもつながるので、社会全体のバランスを見ながら、一つひとつの課題解決をはかっていきたい」旨、回答しました。加藤大臣の回答を受けて、田村議員は「政府が労働移動を推進しているいまこのタイミングで、厚生労働省が本腰を入れて処遇改善などに取り組まなければ、介護人材の不足は解消されない」と強調しました。
その他、田村議員は医薬品等の製造に関し、医薬品製造受託機関(=製薬メーカーから医薬品等の製造を受託する企業)、薬価交渉の現場における課題などについても質疑を行いました。
現在、政府は生産年齢人口が減少傾向にあることをふまえ、経済成長の観点からも社会全体で限りある労働力をより効率的に活用することを目ざし、生産性の高い業種などへの積極的な労働移動を推進しています。一方で、介護分野などでは深刻な人手不足が続いており、処遇面などでいわゆる「雇用ミスマッチ」(=求人側と求職側の間における需要の不一致)が生じている。