中規模・小規模の加盟組合でも”最大限の賃上げ”が続く
3月末時点の妥結状況について記者からの質問に答える古川大(まさる)書記長
2023年4月5日、UAゼンセンは記者会見を開催。報道関係者等19社31名の出席のもと、2023労働条件闘争における3月末時点の妥結状況について報告を行いました。
記者会見の冒頭、松浦昭彦会長は「2023労働条件闘争は、大手から中規模・小規模の組合へ交渉の主体が移り、業種や地域ごとに共闘を組み、3月末を目ざして精力的な交渉を行った。原燃料高に対する価格転嫁など、継続する交渉課題もあり、UAゼンセンとしても引き続き解決を追い求めていきたい。一方で、賃上げに関しては、”早め・高め”の波をしっかりと引き継いでいる。短時間(パートタイム)組合員はこれまでの2回の集中回答日からほぼ数字が下がることなく、結果を出している。短時間(パートタイム)組合員を含めたUAゼンセン全体では、物価上昇分に見合う賃上げが達成できている。この流れを4月、5月そして来年にも着実に引き継いでいきたい」と語りました。本記者会見で共有した最新の妥結状況は下記のとおりです。詳細は添付ファイルをご覧ください。
113万名強の組合員の賃上げが決まる
3月末の妥結状況を集計した4月3日10時時点で、113万名強の組合員の賃上げが決定。雇用形態別には、正社員(フルタイム)組合員は415組合、短時間(パートタイム)組合員は177組合、契約社員組合員は51組合が妥結した。
UAゼンセン結成後、最大の賃上げを達成
正社員組合員、短時間(パートタイム)組合員の妥結ともに、UAゼンセン結成後の2013年賃闘から昨年(2022年)までの水準を大きく上回る、最も高い賃上げとなっている。要求水準を引き上げ交渉したことが高い妥結水準に結びついた。
物価上昇分に見合う賃上げで一定の成果
正社員組合員の妥結総合計(制度昇給、ベア等込)は12,350円(4.16%)、賃金引き上げ分(ベア等) は7,731円(2.54%)の引き上げとなっており、前回の集計からは若干低下しているものの物価上昇をカバーする賃上げへの努力が一定の成果を上げている。
8年間連続で短時間組合員が正社員組合員の引き上げを上回る
短時間(パートタイム)組合員の妥結総合計(制度昇給、ベア等込)は59.2円(5.68%)の引き上げとなっており、3月末時点では8年連続で正社員組合員の引き上げを上回り、雇用形態間格差是正の流れが加速している。とりわけベア等引き上げ分については、4.74%(49.2円)と物価上昇分を大きく超えている。
初任賃金(初任給)の改定が大きく前進
初任賃金は、高卒(171組合)で 7,655円(4.2%)・大卒(192組合)で 10,113円(4.7%)の引き上げとなり、改定が大きく進んでいる。
労働時間改善やあらゆる雇用形態における公正処遇の実現などでも成果
このほか、労働時間改善やあらゆる雇用形態における公正処遇の実現を中心として、闘争方針にもとづき幅広く交渉が行われ成果を上げている。
部門ごとの共闘体制で賃上げに一定の成果
左から吉山事務局長、波岸事務局長、原田事務局長
記者会見ではその後、製造産業、流通、総合サービスの三部門の事務局長が、部門ごとに報告を行い、記者からの質問に回答しました。
最初に、製造産業部門の吉山秀樹事務局長は、「今次闘争では、進捗率、妥結額ともに前年を大きく上回わり、多くの中規模・小規模の組合で前年を上回る成果が上がっている」と全体の基調を報告しました。吉山事務局長は、今回の成果の背景に関して「大手だけでなく、中規模・小規模の企業、組合においても、物価高のもと組合員の生活を守る必要性がある点や業績懸念のもと人材確保の重要性について労使で認識をしっかりと共有していることがある」と提起しました。さらに、吉山事務局長は「引き続き、価格転嫁について状況を把握し、情報共有をはかる。中規模・小規模の地場の労使に賃上げの必要性・重要性をしっかりと浸透させ、賃上げの成果につなげていきたい」と締めくくりました。
次に、波岸孝典流通部門事務局長が「第2回の集中回答日における賃金引き上げ額を3月末までほとんど維持できており、先行組合の形成した相場をしっかりと引き継げている。全体としても過去最大の成果を上げているが、とくに(流通部門単体で見た場合には)短時間(パートタイム)組合員の引き上げ分が正社員組合員を11年間連続で上回っている」と報告。加えて、均等・均衡処遇について、直近の法改正を後押しとして、一時金や退職金、賃金以外の総合的な労働条件に関して、正社員組合員と短時間(パートタイム)組合員の待遇差の解消が進展していることを指摘。「引き続き、この高水準を維持・継続できるように、しっかりとサポートしていきたい」と提起しました。
最後に、総合サービス部門の原田光康事務局長が報告。「今次闘争の開始時は、業種ごとの業況の差など多くの懸念事項があった。しかし、一定の幅を持ちながら、積極的な交渉を展開した結果、良い結果を得ることができた。多岐にわたる業種のなかで、とくに妥結の水準を引き上げた先行組合は新型コロナ感染拡大で大きな影響を受けた外食産業やホテル・レジャーの組合。物価上昇分を十分に意識した賃上げが続いている」と述べました。また、「正社員と短時間(パートタイム)組合員との格差是正も一定の成果を得ている。労使ともに問題意識を共有したことが、賃金引き上げや総合的な労働条件での成果につながる。4月以降に交渉をスタートさせる組合も多いので、他産業に負けない業種ごとの共闘体制をしっかりと組み、先行組合とそん色ない成果を積み上げていきたい」と語りました。