”医療現場の人手不足解消には医療従事者の処遇改善が必要”
医療業種の現場の実態を強く訴える古川部会長
現在、病院経営における収入の大部分は公定価格で決められている診療報酬が占めており、健全な医療体制の構築には診療報酬の引き上げが不可欠となっています。一方で、2023労働条件闘争において、他業種で5.35%という高水準の賃上げ(3月末時点)が行われたなか、医療業種はほぼ定期昇給のみ(5月末時点、1.65%)にとどまり、国民の生命を預かる医療従事者の生活は厳しく、将来への不安を抱えた状態が続いています。
このような状況をふまえ、UAゼンセン総合サービス部門では、2024年度診療報酬改定を控え、医療従事者の処遇改善や人材確保による持続可能な医療体制の実現へ向けて、部門所属組合を中心に署名活動を展開しています。
2023労働条件闘争における医療事業者からの回答
◆物価高騰により組合員の生活が厳しくなっているという組合からの要求内容は十分理解している。しかし、法人も物価高騰により、経営に影響を受けているため、ベアの回答はできない。
◆診療報酬改定の基本方針に、処遇改善や人材確保・定着等に明記されていれば、法人としても賃上げに取り組みやすい。
◆診療報酬が上がらないことには賃上げは難しい。来年度の報酬改定の内容次第では賃上げについて検討する。
”医療現場の人手不足解消には医療従事者の処遇改善が必要”
意見交換後に合流した田村議員(右)。政策実現での奮闘を誓った
さらに、2023年8月29日、総合サービス部門・医療部会の古川政信部会長(社会保険病院労働組合委員長)らが、参議院議員会館において厚生労働省の担当者と意見交換を行いました。本意見交換においては、新型コロナ感染拡大を受けた医療業種を取り巻く環境や現場の実態、組合員から寄せられた声などを伝えるとともに、医療従事者の処遇改善に資する診療報酬改定の実現を強く求めました。具体的には、古川部会長は公立病院と民間病院における労働条件の差や離職者の増加、求職者の減少などの深刻な実態に言及し、医療現場における人材確保の観点から、賃金引き上げの必要性を指摘。そのうえで、「看護師のみならず、検査技師や放射線技師などを含め、医療従事者全体で公正な処遇改善を行うために、これに特化した診療報酬改定を実現してほしい」と訴えました。
これに対し、厚生労働省保険局医療課の渡邊周介課長補佐、竹内海斗主査らは、「いただいた視点も念頭に、従来の制度の効果などを検証するとともに、皆さんの声を今後の制度の検討や実施につなげていきたい」旨、回答しました。その後、本要請に関するさまざまな事項につき、相互に意見を交わしました。
また、意見交換後に、田村まみ組織内参議院議員が公務の合間を縫って合流。古川部会長は、田村議員に対し、あらためて要請書を手交し、「医療従事者の声を診療報酬改定をはじめ、政策・制度の実現に反映させてほしい」と求めました。これに対し、田村議員は「今後も皆さんと連携し、要請や国会質疑をはじめ、政策実現に取り組んでいきたい」と応じました。
1. 医療従事者が安心して働き続けることができるように、物価・エネルギー価格の高騰を上回る診療報酬改定
2. 看護職員処遇改善評価料において実施された診療報酬による処遇改善を、すべての医療機関・医療従事者に同様の処遇改善が実現できる施策
3. 診療報酬改定の基本方針に人材確保や処遇改善等の「人への投資」につながる内容を追加すること