武見大臣に署名簿を手交し、持続的な賃上げの環境整備を求める松浦会長
”持続的な賃金引き上げには環境整備が必要不可欠”
全国の加盟組合から寄せられた”思い”の込められた組織署名
現在、2023年労働条件闘争での大幅な賃上げにも関わらず、それを上回る物価上昇の影響で実質賃金の低下が続き、依然として国民生活は厳しい状況に置かれています。長期間にわたるデフレ経済から脱却し、実質賃金を再浮上させ、国民生活を向上させるために、2024労働条件闘争では労使交渉をつうじ、すべての職場で物価上昇を上回る賃金の引き上げを実現し、賃金と物価の好循環を生み出す必要があります。
UAゼンセンでは、このような状況のもと、2024年賃金闘争において「制度昇給などの賃金体系維持分に加えて4%基準、総合計6%基準」を掲げています(参考:連合の基準は「賃金引き上げ3%、総額5%」)。今後、加盟組合はこの要求基準にもとづき、要求書を提出し、労使交渉に臨みます。
しかし、エネルギーや原材料、人件費等の上昇分を販売価格に転嫁することが困難な企業においては、十分な賃金引き上げ原資を確保することが難しい状況があります。また、社会全体が根強いデフレマインドから脱却できていないため、商品やサービスを”価値”に見合った”価格”で購入する経済活動への転換も進んでいません。さらに、労働組合がない企業では賃金引き上げの実効性が不透明であり、賃上げ促進税制などの各種制度の周知強化にも課題があります。これらに加え、企業の規模間格差が拡大している現状をふまえると、UAゼンセンの加盟組合の多くを占める中規模・小規模の企業の賃金引き上げにはとくに留意が必要な状況です。
実際に、現在展開中している組合員の現場の「声」を政策実現につなげる「まみに聴かせてキャンペーン」(本年6月末まで実施)においても、全国各地の組合員から「物価上昇に対して賃金引き上げが追いついていない。法律等による後押しが必要」(岡山県・40代)「頑張って働いているが、物価高で生活費にすべて消えてしまう。とくに冬の水道光熱費が大変」(滋賀県・30代)「税金や社会保険料も上がり、可処分所得が減っている。国民生活を向上させ、消費を促す環境を整備してほしい」(東京都・30代)など、持続的な賃上げの必要性を強調する切実な声が多数寄せられいます。
UAゼンセンはこれらの社会・経済情勢をふまえ、2024賃金闘争が置かれた状況を日本全体での物価上昇を上回る賃金引き上げが求められる重要な局面と認識。持続的な賃金引き上げを実現するための環境整備をはかるため、「物価上昇を上回る持続的な賃金引き上げの実現に向けた政府の環境整備を求める要請書(代表による署名)」による署名活動を展開しました。その結果、全国各地の加盟組合の協力により、1,676組合・組合員にして178万1,597名分の組織署名(代表による署名)を集約しました。
1,676組合・178万1,597名分の署名に込められた”思い”を伝達
意見交換で政府の環境整備の必要性を力強く訴える田村議員
2024年2月8日夕刻、UAゼンセンの松浦昭彦会長は厚生労働省を訪問。武見敬三厚生労働大臣に対し、岸田文雄内閣総理大臣宛の署名簿を手交し、「2023賃金闘争では高水準の成果が上がった一方で、大企業と中小企業の賃金格差は縮小しない結果となった。今次闘争では、中小企業の底上げや格差是正を目ざし、『より高く、より広く』賃金引き上げに取り組む。そのようななかで、労務費の価格転嫁や適正取引の推進、エネルギー価格対策、賃上げ促進税制等の周知強化など、労使交渉では対応が難しい課題については、政府による環境整備が重要」と求めました。また、その後の意見交換のなかでは、田村まみ組織内参議院議員が「先の国会で、武見大臣には、とりわけ介護従事者の賃金水準に対し、『全産業平均を目ざす』という趣旨の前向きな答弁をいただいた。介護従事者の処遇改善や『年収の壁』問題の改善など、厚生労働省所管の課題の解決へ向けて、より一層取り組みの強化をお願いしたい」と訴えました。川合孝典組織内参議院議員、堂込まきこ組織内参議院議員も、それぞれ「事業者に対して、賃上げ原資の確保へ向けて、政府が用意している各種助成金のメリットを十分に周知し、活用を促す取り組みの強化が必要」「地方で政労使で賃上げの機運が高まるなか、労働組合がけん引する賃金引き上げの流れを未組織労働者にも波及させることが重要」と提起しました。
これらの要請に対し、武見厚生労働大臣は「本日要請いただいた趣旨と政府の立場は一致している。厚生労働省としても地方での取り組みや事業者への働きかけを強化するなど、昨年以上の賃金引き上げの実現へ向けて徹底的に対策を講じる」と応じました。