“持続的な賃上げの実現で組合員の生活向上を実現する”
2026労働条件闘争へ向けて決意を語る永島会長
2025年11月6日、UAゼンセンは東京ドームホテルB1階「天空」をメイン会場として、Zoomを併用する形で「2026政策フォーラム」を開催。2026労働条件闘争方針の素案に関して、加盟組合代表者による討議を行いました。
冒頭、永島智子会長は挨拶のなかで、「本日は2026労働条件闘争の方針に関する議論のスタートとなる。現下の政治状況に目を向けると、高市早苗総理大臣は施政方針演説のなかで、継続的な賃上げへ向けた環境整備するとしている一方、労働時間規制の緩和の検討など、これまでの労働時間短縮の取り組みに反する言動も目に付く。引き続き、働く者の視点から政治状況を注視していく必要がある。この間、UAゼンセンでは加盟組合の奮闘により、大幅な賃上げを実現してきた。しかし、これまでの物価高騰の影響で、中小労組を中心に生活向上を実感できない状況がある。2025闘争方針において、UAゼンセンは『物価上昇を1%程度上回る賃上げ上昇を社会全体で共有する』ということを提起し、政府も同じ方向性で継続的な賃上げの定着を呼びかけている。UAゼンセンには社会を動かす力と責任があるという認識を改めて共有したい。これをふまえ、『実質賃金1%上昇の定着』『最低賃金の持続的な引き上げ』『労働時間短縮とキャリア形成支援』『統一闘争による交渉力強化』の4つの柱をつうじて、すべての働く者が人間らしく心豊かに生きていくことができる社会の実現に取り組む」と決意を語りました。
なお、永島会長は国際産業別組織「IndustriALL Global Union」の世界大会に出席中のため、事前に収録したビデオメッセージで挨拶を行いました。
続いて、東京都立大学経済経営学部の脇田成教授から、「持続的な賃金上昇システムを目ざして」と題した講演をいただきました。脇田教授は、これまでの日本経済の概況を解説。賃金伸び率や企業における配当金、人件費、利益剰余金の状況、物価上昇と賃金上昇の比較などを詳細なデータで示しながら、持続的な賃上げを実現する構造の必要性を強調しました。
”UAゼンセンの総力を挙げて実質賃金の上昇に取り組む”
全体討議で発言する西尾書記長
講演後、松井健労働条件局長が「2026労働条件闘争の考え方」について説明を行いました。冒頭、松井局長は取り巻く経済情勢について、「トランプ関税」による影響は懸念していたほど大きくなく、企業業績の上方修正や物価上昇の上振れが続き、昨年とほぼ同様の状況にあることを指摘。一方、これまで3年間の大幅な賃上げ実現にも関わらず、著しい物価上昇が継続していることから組合員が生活向上を実感できていない現状を示しました。
これをふまえ、松井局長は「日本全体で実質賃金が上昇していないなか、国民の消費は冷え込んでおり、生活関連産業を組織するUAゼンセンの賃上げにも負の影響を及ぼしている。合わせて、企業における配当金や利益剰余金が上昇していることを考えると、生産性向上の労働者に公正に配分されているとは言えない」と強調。「2026闘争においても、賃上げの流れを継続・定着させていくことが重要」と訴えました。加えて、2026闘争においてとくに注力すべき項目として、この間の大幅な地域別最低賃金に伴い、企業内最低賃金協定の確認、引き上げに関する取り組みについて提起しました。
具体的に、2026賃金闘争では、正社員(フルタイム)組合員の要求基準として「賃金体系が維持されている組合は、賃金体系維持分に加え4%、賃金体系が維持されていない組合は6%に、格差是正分として1%程度を加えて賃金を引き上げる。要求額としては、賃金体系維持分に加え13,500円、賃金体系が維持されていない組合は18,000円に達するよう積極的に取り組む」ことを掲げました。また、短時間(パートタイム)組合員については、「制度昇給分に加え、時間額を65円、5%基準で引き上げる。制度昇給分が明確でない場合は、制度昇給分を含めて時間額を85円、7%基準で引き上げる」ことを要求基準として示しました。
その他、2026期末一時金闘争や労働時間の短縮・改善、キャリア形成支援とデジタル技術革新の労使協議の推進、総合的な労働条件改善のうち、均等・均衡処遇の実現と多様な正社員化の推進、職場のジェンダー平等の取り組み、仕事と生活の両立支援などについて説明を行いました。
また、製造産業・流通・総合サービス各部門の事務局長は、各部門の方針や取り組みを報告。報告後には、闘争方針素案に関して質疑応答を含む討議を行いました。
最後に、西尾多聞書記長は「労働条件闘争は公正労働基準の確立を目的に、組合員のために行うもの。これを大前提として、より効果的に闘争を進めるために、2026闘争では、3月中の妥結を目ざすという形で統一闘争を強化している。それぞれの加盟組合の事情も把握しながら、個別的支援も展開しつつ、UAゼンセン全体で取り組んでいきたい。また、企業内最低賃金に関する取り組みでは、『協約なくして労働なし』という言葉に表されるように、私達はみずからの労働条件に関するルールを労使交渉をつうじて、協約の形にしてきた。あらためて、この原点に立ち返り、企業内最低賃金の確認、引き上げに取り組んでいきたい。さらに、労使交渉で改善できない部分については、重点政策にもとづく政策・制度要求をつうじて、賃上げ実現に資する環境整備を推進していきたい。本日より、闘争方針に関して、都道府県支部・部門における討議がスタートする。加盟組合の皆さんの積極的な参加・参画をお願いしたい」と本フォーラムを締めくくりました。
なお、2026労働条件闘争方針(素案)は部門や都道府県支部での討議を経て、来年1月22日開催の第14回中央委員会で決定します。また、本フォーラムにおける質疑応答の内容は『UAゼンセン新聞』11月13日号に掲載します。