質疑を行う堂込まきこ議員(右)と答弁する鈴木財務大臣(左)
”軽減税率導入に当たる事業者の負担把握が必要”
2022年11月17日、財政金融委員会が開催され、堂込まきこ組織内参議院議員が質疑に立ちました。
今回、堂込議員は軽減税率など、消費税に関する制度を取り上げ、20年以上にわたり小売業に携わってきた自身の経験や労働組合の活動で得られた実感などをふまえ、質疑を行いました。
具体的には、堂込議員は消費税に関する制度が変更になるたびに、関連システム改修や表示の切り替え、買い控えを抑えるためのサービス等の提供など、流通・サービス業の店舗において多大な費用と労力が発生していることに言及しました。また、実際に小売業の現場で働く従業員から「消費税の制度はできるだけシンプルであってほしい」という声が寄せられているとし、そのうえで「2019年に軽減税率が導入されたが、流通業界をはじめ各界から、システム改修など事業者の負担が大きいことによる反対の声があげられていた。複雑怪奇とも言われる軽減税率の導入は、いまだに疑問が残る。少なくとも、財務省として軽減税率導入に際し、事業者にとって追加的に必要となったコスト等について把握・分析する必要があるのではないか」と訴えました。
これに対し、住澤整主税局長は「消費税制度の運営に当たり、流通業界をはじめ事業者の皆さんの事務負担に負っている部分は多いと認識している。そのうえで、財務省としてはこれまで軽減税率対応するレジ導入・改修への補助、特例として売り上げまたは仕入れの一定割合を軽減税率対象として計上できる経過措置を設けるなどの負担軽減措置を講じてきた。一方で、ご指摘の事業者が負ったコスト等の把握については、個々の事業者によって状況が異なるので、定量的な把握・分析は困難だと認識している」旨、答弁を行いました。
この答弁を受けて堂込議員は、鈴木俊一財務大臣に対し、「軽減税率導入による事業者の事務負担やコストに対し、財務省として十分な手当てや取り組みを行ったと認識しているのか」と認識を質しました。
堂込議員の問いかけに対し、鈴木財務大臣は「軽減税率の導入に当たり、事業者に生じる事務負担やコストに対し、いまほど主税局長が答弁したとおり、さまざまな取り組みを行ってきた。加えて、事業者団体をつうじた説明会などを活用し、事業者の実態を把握し、きめ細やかな対応を行ってきたと認識している」と回答しました。これを受けて、堂込議員は「軽減税率導入により、最終的にはどこに事務負担やコストといった面でしわ寄せがいったのか、また、導入後の実態を把握し、社会全体で費用対効果に合った制度になるようにあるべき姿を検討すべき」と訴えました。
その他、堂込議員はインボイス制度導入や奨学金に関する課題などについても質疑を行いました。
自身の質疑に対する鈴木財務大臣の答弁を受ける堂込まきこ議員(左)
消費税とは、商品販売やサービス提供などの取り引きに対して課税される税。日本では1989年に導入された(当時の税率は3%)。その後、1997年に5%、2014年には8%へと税率が引き上げられた。さらに、2019年には税率が10%に引き上げられるとともに、「軽減税率」の制度が導入された。 軽減税率とは、特定の商品、サービス等について消費税の税率を下げる制度。現在、わが国では酒類・外食を除く飲食料品、新聞などに軽減税率が適用されており、これらの商品に対する消費税の税率は8%となっている。なお、軽減税率の導入により、流通・サービス業の店舗では商品による適用の違いはもちろん、「店内飲食は10%、持ち帰りは8%」など追加の対応が必要な場面が生じ、現場に混乱と負担増を招くこととなった。
<インボイス制度について>
「インボイス制度」とは、2023年10月1日から新たに導入される消費税の仕入税額控除(=事業者が消費税の納付額を計算する際に、売上にかかっている消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引くこと)の方式。これにより、事業者が発行・交付する「適格申請書」(=インボイス/発行・交付には事前の登録が必要。また、適格申請書には事業者登録番号などを明記しなければならない)に記載された税額のみ控除することができるようになる。また、インボイス発行ができるのは、消費税の課税事業者(=課税売上高1000万円以上で該当)。これらの点から、インボイスを発行できない消費税の免税事業者(=課税売上高1000万円未満が該当)と取り引き(仕入れ)を行った場合、仕入税額控除ができなくなることで、免税事業者である中規模・小規模事業者が取り引きから排除されることなどが懸念されている。なお、事業の性質から公共交通機関、自販機、郵便サービスなどの業種は特例としてインボイスの交付を免除されている。堂込まきこ議員は交付が困難な事業者は他にも多数あり、さまざまなところで制度の導入に反対の声が上がっている点もふまえ、課題の多いインボイス制度を一旦凍結すべきと求めた。
<奨学金の返済について>
現在、奨学金に関して、卒業後の所得に応じて返還する「出世払い型奨学金」などの議論が進められている。また、日本学生支援機構では、2021年から貸与型奨学金について、企業が従業員の奨学金返還を支援する「代理返還」について、企業が日本学生支援機構に直接送金することが可能となった。これにより、従業員は所得税の課税なく返還でき、企業は負担した返還額について損金算入でき、節税効果があるなど、双方にとってメリットが生じている。これらの点をふまえ、堂込議員は財務省としても、奨学金返還について毎年の返済額を所得控除するなど、税制上の支援の必要性を訴えた。