”いわゆる「年収の壁」解消を目ざし、迅速な決断と実行を”

 

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いわゆる「年収の壁」解消を求める田村議員(右)と答弁する岸田総理大臣

 

 2023年3月27日、田村まみ組織内参議院議員は予算委員会で質疑を実施。21分間にわたり、岸田文雄内閣総理大臣に対し、いわゆる「年収の壁」の解消に関し、具体的な期限を定め、スピード感を持った対応を求めました。

 田村議員はこれまでも、働き方に中立的な税・社会保障制度の確立を目ざし、いわゆる「年収の壁」の解消を訴えてきました。

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 質疑の冒頭、田村議員は多くのパートタイマーとともに働いた自身のスーパーマーケットでの勤務時代を「私が入社した25年前から、毎年10月から年末にかけて、必ずいわゆる『年収の壁』が原因となり、就業調整が発生していた」と振り返りました。そのうえで、「時間給が上がることは、当該パートタイマーの仕事の価値が評価されていることなので、本人にとってよろこぶべきこと。一方で、いわゆる『年収の壁』により、個人の活躍の場が狭められているという実態がある」と提起しました。

 その後、田村議員はいわゆる「年収の壁」を図示(別表参照)しながら、103万円、106万円(130万円)、150万円の3つの壁を取り上げました。田村議員は、1月23日の施政方針演説において岸田総理大臣が「103万円、130万円の『壁』について制度を見直していく」ことを明言した一方で、3月17日の記者会見においては、子供・子育て政策の基本的な考え方のなかで「106万円・130万円の『壁』について、支援策の導入や制度の見直しに取り組む」と明言したことに言及。「施政方針演説から記者会見までの間に課題認識の変化があったか」と投げかけました。

 これに対し、岸田総理大臣は「いわゆる『年収の壁』について、『これが原因となり、就業調整が行われ、パートタイマーが希望どおりに働くことを阻害している』というご指摘があり、重要な課題だと分かった。これを受けて、被用者が新たに106万円を超えても、賃金の手取りに逆転を生じさせない支援を最初に導入したうえで、さらなる制度の見直しを取り組んでいきたい」と答弁を行いました。

 岸田総理大臣の答弁を受け、田村議員は「労働力不足という表面的な視点だけでは、いわゆる『年収の壁』の問題に関して適切に対応することはできない」と指摘。実際に「事業者は人材確保のために賃上げをするが、却って人手不足に拍車をかける結果となっている」「就業調整が発生することで、職場内で他の従業員に負担がかかり、雰囲気が悪くなっている」など、切実な嘆きの声が寄せられていることにふれ、政府のこれまでの対応について「106万円の『壁』を超えた際に支払う社会保険料の穴埋め策に終始している。いわゆる『年収の壁』の一番の問題は職場の軋轢にある。これが働く意欲を喪失させ、生産性を低下させてしまう。税制や社会保険、企業の賃金制度など、分野をまたいだ課題について決断できるのは総理大臣のみ。期限を決めた迅速な決断をお願いしたい」と訴えました。重ねて田村議員は「昨年12月には全世代型社会保障構築会議が『社会保険に関する企業規模要件を早期に撤廃すべき』という報告書を出した。これを迅速に実現する必要がある。いつまでに撤廃をしていくかという決断をいますぐに実行してほしい」と求めました。

 田村議員の投げかけに対し、岸田総理大臣は「本来、被用者に該当する全員に被用者保険を適用することが原則であり、『企業規模要件』は、法律上、当分の間と想定された経過措置となっている。これをふまえれば、最終的には『企業規模要件』は撤廃しなければならないと認識している。しかしながら、被用者保険の適用拡大は事業主の負担増につながることから、中規模・小規模の事業者の経営への配慮が求められる。関係者の理解を得ながら、段階的にさらなる適用拡大に努めていきたい」と回答しました。

 

”すべての労働者が活躍でき、賃金が上がる社会の構築へ”

 

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田村議員の質問に対する岸田総理大臣による答弁の様子

 

 続いて、田村議員は「第3号被保険者(=厚生年金等の加入者に扶養される配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の者)」制度の見直しについて質疑を行いました。具体的には、「厚生年金の加入については、負担が増える一方で将来の年金額が上乗せされるため、該当者にもメリットが感じられる。一方で、健康保険については配偶者の扶養から外れてしまうことで、単なる負担増と受け止められている」と課題を提起し、「第3号被保険者の見直しについては、20年以上議論されているが、いつ結論を出すか早急に決断する必要がある」と求めました。

 これに対し、加藤勝信厚生労働大臣は「第3号被保険者の縮小へ向けたステップにつき、関係者の理解を得ながら、被保険者の適用拡大の取り組みを着実に進めていきたい」と答弁を行いました。さらに、田村議員は「政府は106万円の『壁』の対策として、いわゆる非正規労働者に対して希望者の正規雇用化、リスキリングによる能力の向上、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めていく三位一体の労働市場改革を進めるとしている。106万円の適用拡大、第3号被保険者の問題は同時期に、期限も同じように設け、スピード感を持って対応しなければ実現しない」と訴えました。加えて、田村議員はいわゆる「年収の壁」に関し、国の制度とともに民間企業の課題が大きいと指摘し、「多くの企業が処遇の手本とする国家公務員に対する家族手当の制度に、いまだにパートナーの年収要件が残っている。半数近くの企業で収入制限付きの配偶者手当が残っているという調査もある。女性だけでなく、すべての人々が活躍でき、賃金が上がる社会を目ざし、『企業規模要件』の撤廃や第3号被保険者の見直しに取り組んでほしい」と強く求めました。

 田村議員に対し、岸田総理大臣は「社会保障改革のみならず、雇用や介護、子育て支援といった関連する政策も含め、個人のライフサイクルに応じた多様な働き方が可能になるような環境整備が重要であると考えており、必要な政策実現に取り組んでいきたい」と回答しました。

 最後に、田村議員は「遅くとも、ことしの骨太の方針に『壁』の撤廃を目ざす期限を明記すべき。就業調整を生じさせる『壁』をなくすということをぜひ決断してほしい」と質問を締めくくりました。

 

田村議員が主張した3つの「壁」のイメージ

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