”年間総労働時間1800時間の実現を目ざす”

 

小倉教授

Zoomウェビナーをつうじ講演を行う小倉教授

 

 2022年の一般労働者の年間総実労働時間は1,948時間(前年より3時間増)となり、産業計では2,000時間を下回るものの、業種別には建設業、運輸業、宿泊業で2,000時間を上回るほか、経済回復に伴って人材不足の業種で労働時間が増加する傾向にあります(厚生労働省『毎月勤労統計調査2022年確報』より)。一方で、UAゼンセン『2023労働条件実態統一調査(速報)』によると、UAゼンセンの正社員組合員の年間総実労働時間(加重平均)は2,007時間となっています。

 

 また、年間有給休暇の取得日数と取得率の社会平均はそれぞれ過去最高の10.9日(前年比0.6日増)、62.1%(前年比3.8%増)となっていますが(厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』)、UAゼンセン実施の調査では、11.4日、63.1%という結果が明らかになりました。

 

 このような状況をふまえ、UAゼンセンは2024労働条件闘争方針(素案)において、年間1,800時間の実現を目ざしています。

 

2024労働条件闘争方針(素案)

一人ひとりがワーク・ライフ・バランスに応じて働き、心身ともに健康に生活することのできる労働時間として、年間総実労働時間1,800時間の実現を目ざし、働き方の特性に応じた取り組みを推進する。(中略)到達基準および目標基準、重点項目をふまえ、部門、部会ごとに2025年を目途に実現する総実労働時間を設定し取り組む。

※2024労働条件闘争方針は来年1月23日開催の第12回中央委員会で決定します。

 

"長時間労働の原因を探り、できることから取り組みを前進させる”

 

加藤副書記長 桜井書記長

事例報告を行う加藤副書記長と桜井書記長(左から)

 

 2023年11月29日、UAゼンセンは毎年の労働条件闘争の解決報告をもとに、好事例を共有し合うことで、UAゼンセン全体で労働時間改善を活性化するため、「労働時間改善運動活性化セミナー」を開催。Zoomウェビナーをつうじ、74名が参加し、労働時間の短縮・改善に関する認識や加盟組合労使の取り組み事例を共有しました。

 

 冒頭、松井健労働条件局長は、挨拶のなかで「2024労働条件闘争は、2025年を目途とする『年間総労働時間1,800時間』の実現へ向けた部門・部会別目標の達成にとって、非常に重要な取り組みとなる。労働時間の短縮・改善に当たっては、二つの視点を持って取り組みを前進させたい。一つは、新型コロナ感染拡大により停滞した働き方改革について、コロナ禍での経験を生かし、ふたたび推進していくということ。もう一つの視点は、30年ぶりの賃上げが注目されるいま、30年前に掲げられた目標である『年間総労働時間1,800時間』を実現し、魅力ある賃金と働き方で人手不足を解消していくということ。本セミナーで共有する好事例などを参考に、労働時間の短縮・改善に積極的な取り組みをお願いしたい」と語りました。

 

 その後、早稲田大学商学学術院の小倉一哉教授が「労働時間問題の現状と働き方改革」と題した基調講演を実施。小倉教授は、わが国のメンバーシップ型雇用(=職務や勤務地を限定することなく新卒で正社員を一括採用し、長期にわたって雇用する雇用システム)の特性を指摘。これふまえ、時間外労働に関する割増賃金率の諸外国との比較や働き方改革の成果と取り組みを要素とした回帰分析の結果を示しながら、長時間労働が生じる背景やそれを解消するために有効な取り組みを提起。そのうえで、「労働時間の短縮・改善には、実際に『動きながら考える』ことが重要。使えるものを最大限に活用し、やれることからやる。できない理由を考えるのではなく、『どうしたらできるのか』という視点が結果につながる」と強調しました。

 

 講演後、ヤマダホールディングスユニオンの加藤宏則副書記長、セブン&アイグループ労働組合連合会セブン&アイ・フードシステムズ労働組合の桜井満太郎書記長がそれぞれ自組織の取り組みを報告しました。

※事例報告の内容については『UAゼンセン新聞』『コンパス』に掲載します。

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