”組合員の生活を守る賃上げ”の実現を目ざす

 

記者会見 書記長挨拶

趣旨説明を行う古川書記長

 2023年1月12日、UAゼンセンは、2023労働条件闘争方針を決定する第11回中央委員会(1月18日、大阪開催)に関して、記者レクチャーを行いました(報道関係者等18社25名が出席)。

 冒頭、古川大(まさる)書記長が趣旨説明を実施。そのなかで古川書記長は、「この間、日本の賃金が長期にわたって停滞する一方で、昨年の春以降、物価が急激に上昇したことから、組合員の生活は厳しさを増している」という現状認識を示しました。

 そのうえで、古川書記長は「UAゼンセンには、他産業と比較して、賃金水準等が相対的に低位にある産業や中規模・小規模の労働組合が多く加盟しているが、これまでも『産業間』『企業規模間』『雇用形態間』の3つの格差是正を継続し、一定の成果が得られている。2023労働条件闘争では、引き続き、これらの格差是正に取り組むことに加え、新型コロナ感染拡大からの経済回復のなかで顕在化した人手不足の現状も鑑み、各加盟組合企業が持続的に成長できるように、連合(日本労働組合総連合会)の掲げた基準に上積みをはかり、『制度昇給等の賃金体系維持分に加えて4%程度、全体で6%程度の賃金引き上げを目ざす』という方針を第11回中央委員会で上程する」と語りました。

【参考】UAゼンセン 2023労働条件闘争方針(賃金闘争 要求の考え方)

 

 組合員の期待に応え、社会的な賃上げの流れをつくるため、制度昇給等の賃金体系維持分に加えて4%程度、合計6%程度の賃金引き上げを目ざす。

【参考】連合 2023春季生活闘争の取り組み内容

 

 各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点と、すべての働く人の生活を持続的に・維持・向上させる転換点とするマクロの観点から、賃上げを3%程度、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げを5%程度とする。

”社会的賃上げ”へ向け、社会全体で合意形成をはかる

 

古川書記長

”社会的な賃上げ”の必要性を訴える古川書記長

 さらに、古川書記長は2023労働条件闘争における賃上げに関し、「賃金と物価がともに安定的に上昇し、国民生活の向上につながる経済の好循環を生む必要がある」と提起し、社会的な賃金引き上げの実現へ向けた世論喚起や社会全体での合意形成に取り組む必要があると強調しました。

 具体的には、古川書記長は、(1)政府が主体となり中央・地方の経済団体、国民に”物価上昇分をカバーする賃金の引き上げ”の必要性を訴え、社会的賃上げの機運を高めること(2)2023年3月実施予定の「価格交渉促進月間」(=発注側企業と受注側企業の価格交渉、価格転嫁を後押しする月間。政府が設定しており、例年3月と9月に実施している)を前倒し、なおかつ大規模に展開することで取引の適正化を強力に推進すること(3)エネルギー価格高騰への対策として、トリガー条項の凍結解除やさらなる電気・ガス料金などの負担軽減を行うこと(4)「賃上げ促進税制」(=事業者が従業員の賃上げを行った場合、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度)「キャリアアップ助成金」(=いわゆる非正規労働者の雇用条件や処遇の改善を行った場合、事業者に助成金を支給する制度)等、賃上げを促進する制度をさらに拡充し、企業に活用を積極的に働きかけることの4点を掲げ、「2月に岸田文雄内閣総理大臣に対し、要請を実施するために準備を進めていく」と決意を語りました。

 その後、製造産業、流通、総合サービスの各部門の事務局長より、それぞれの部門における闘争方針に関して、説明を行いました。各部門の闘争方針に関しては、下記リンクよりご確認ください。

製造産業部門の闘争方針

流通部門の闘争方針

総合サービス部門の闘争方針

質疑応答の内容(抜粋)

 

Q:賃上げの要求水準について、本部方針と部門方針で要求基準(〇%)が違う理由は?

A:賃上げに関する本部の要求基準は、正社員(フルタイム)組合員につき、ミニマム水準未達の組合・賃金水準不明の組合では、「賃金体系維持分に加え、3%以上もしくは総額で5%以上」とし、これに加えて「1%程度の上積み要求に取り組む」としている。この基準のもと、各産業の状況、実態をふまえ、各部門の方針が決定されている。以上のことから、各部門の方針は本部方針をふまえた・包含したものと認識している。また、部門では例年もそれぞれの産業・業種をふまえた要求基準を設定している。

 

Q:短時間組合員の時給引き上げの基準について、本部方針は「50円」を示しているが、流通、総合サービス両部門はともに「60円」を掲げているのはなぜか?。また、これは2012年のUAゼンセン結成以来、最高水準のものか?

A:短時間組合員の時給引き上げについては、本部方針のなかで「制度昇給分に加えて3%以上、もしくは総額で5%以上、総額50円」を目安としており、それに加えて「1%程度の上積み要求を行う」としている。流通、総合サービスの両部門の要求方針は、これをふまえた内容になっている。また、UAゼンセンが結成された2012年以降、過去最高と認識している。

 

Q:これまでと状況が異なるなか、実質賃金がマイナスにならないための方策はあるか?

A:「3%以上」を獲得しなければ実質賃金が上がらないという現状のなか、加盟組合からは「賃上げへ向けた環境整備に取り組んでほしい」という声が多く寄せられた。2月に実施予定の社会的な賃上げへ向けた要請の他にも、これまでも省庁や政党に対し要請を行い、業界団体とも連携をしてきた。さらに、今後、労使交渉が始まると、業種内での連携・連帯が重要になってくると認識している。共闘体制のもと、情報の連携を密にし、切磋琢磨しながら交渉を展開する必要がある。UAゼンセンとしても精いっぱいサポートしていきたい。

 

Q :昨日、ユニクロを展開するファーストリテイリングが大幅な賃上げを発表したが、影響はあるか?。また、労使交渉の枠組みのない同社がこれほどの賃上げができるならば、UAゼンセンとしてはもっと大きな数字で要求ができるのではないか?

A:労使関係という枠組みの有無というよりは、積極的に海外展開をする一企業の特性という面も強いと感じている。一方で大幅な賃上げを発表したことにより、社会の機運が高まることは良いことと認識している。

A:また、労使の枠組みのなかで、流通部門では6年間をかけて徐々に賃金を上げてきている。これらの点は賃金センサスなどからも明らかであり、労使間の中長期の努力を引き続き、後押ししていく必要がある。

 

Q : 正社員組合員の賃金引き上げ「6%以上」という基準が過去最大という認識でよいか?

A:正社員組合員のみならず、短時間組合員の基準についてもUAゼンセン結成以来、過去最大となっている。

 

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