”健康経営のさらなる推進には労働組合の関与が不可欠”
健康経営の必要性を提起する松井局長(左)と経済産業省の山崎課長補佐
UAゼンセンは2017年以降、「安全で健康に働くことができ、働くことが心身の健康につながる職場」を掲げ、労働安全衛生に取り組んでいます。2024年11月20日、UAゼンセンは2024年度「秋の安全衛生担当者学習会」をZoom併用で開催。加盟組合労使を中心に約70名が出席し、「健康経営」に関して理解を深めました。
冒頭、松井健労働条件局長は、「従来の安全衛生活動は、事故や疾病の予防といった『仕事をつうじて労働者が不健康状態に陥ることを防ぐ』ことを大きな目的としてきた。仕事内容の変化などもあり、今後は『仕事を通じて労働者が健康になる』ということを目標とする必要がある。そこで、本学習会では、経済産業省が推進している『健康経営』の視点で、労働組合はどのように従業員(組合員)の健康に関与していくべきかという点について理解を深めていきたい」と述べました。
その後、経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課の山崎牧子課長補佐を講師に招き、「健康経営の足跡とこれから」と題した講演を実施。山崎課長補佐は、人口減少と高齢化が進展する日本において、より一層、職場での「予防・健康づくり」を強化する必要性を提起。そのうえで、健康経営を「従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と捉え、業績や企業価値の向上といった企業への効果はもとより、国民の健康増進といった社会への効果も見込まれることを示しました。さらに、健康経営に対する顕彰制度などを示しながら、「経済産業省は引き続き、各種施策をつうじて健康経営を後押ししていく。これからも健康経営の裾野を広げ、職場や地域をはじめ、さまざまな当事者と連携し、より一層充実をはかっていきたい」と強調しました。
”最強戦略としての健康経営”を労働組合の視点で考える
事例発表などをつうじて健康経営への労働組合の関わり方について理解を深めた
続いて、大阪公立大学の新井卓二客員教授から「最強戦略としての健康経営」と題して、健康経営の取り組み手法や労働組合としての関わり方についての講義をいただきました。新井教授は従来の人材開発に「ウェルネス健康キャリア」の視点を導入する重要性を指摘。現在、企業は健康経営を土台(基礎)の戦略として捉えているとしたうえで、健康寿命が伸長していくなかで、一人ひとりが仕事をしながら健康な状態で生活を楽しむことを意識する必要があると提起しました。また、健康経営に期待されるさまざまな効果を示しつつ、「あらゆる企業において、まずは現状を把握すること。そして、できることから健康経営を始めることが重要。始めたあとで、実際に健康経営を推進していくなかで、自組織に合ったオリジナルの施策の実現を目ざしてほしい」と期待を寄せました。さらに、「健康経営を推進していくに当たっては、経営者はもとより、保険組合や人事・総務担当者、広報担当者などさまざまな関係者が力を合わせる必要がある。労働組合の参加・参画も非常に重要な意味を持つ。ぜひ積極的に参加してほしい」と訴えました。
最後に本学習会では、マルイグループユニオンの金田素樹委員長が「マルイグループユニオンの取り組みについて」の報告を行いました。具体的には、丸井グループとして「3つの多様性(=個人のなかの多様性、男女の多様性、年代の多様性)」と「2つの健康(=活力のウェルネス、基盤のヘルスケア)」をつうじ、目標として掲げる「お客さまの『しあわせ』の実現」を目ざしていることを紹介。これを前提に、マルイグループユニオンとして「個人軸(=健康はすべての土台、可処分所得の最大化)」と「組織軸(=従業員の休職や減少は人的資本の喪失、健保財政悪化への備え)」の2つの軸を持って健康経営に取り組んでいることを強調しました。また、会社からの働きかけ(トップダウン)と合わせて、組合活動(=ボトムアップ/仲間の行動)によって一人ひとりの組合員の健康に対する意識や行動を変容させるという観点から、健康に関する情報提供やウォーキング企画といったイベントの開催を実施していることを報告しました。