”一時的な対応でなく、道筋を示すべき” 「年収の壁」解消で提起

 

参議院・厚生労働委員会 参議院・厚生労働委員会

いわゆる「年収の壁」についての認識を質す田村議員(右)と答弁する加藤大臣

 

 2023年4月13日、厚生労働委員会が開かれ、田村まみ組織内参議院議員が質疑を行いました。本委員会の冒頭、田村議員は他の出席議員の質問をふまえ、いわゆる「年収の壁」について加藤勝信厚生労働大臣の認識を質しました。

 具体的には、田村議員は「先般の予算委員会で、岸田文雄総理大臣はいわゆる『年収の壁』の見直しについて、当面の手取りの減少への対策に言及していた。しかし、この一時的な『穴埋め』に用いられる財源は、税・社会保険料を支払っている国民の負担となる」と指摘。そのうえで、「一時的な目の前の手当を実行する前に、社会保障全体の制度を守っていく観点からも、政府としていわゆる『年収の壁』解消へ向けた根本的な道筋を示すことが必要なのではないか」と加藤厚生労働大臣に投げかけました。

 これに対し、加藤厚生労働大臣は「具体的な『年収の壁』ごとに対応を検討し、実行していく必要がある。一方、ご指摘のとおり、すでに税・社会保険料を負担している方々との『公平性』に十分な配慮をしながら、検討をする必要があると理解している。企業の『家族手当』などの実態も把握しながら、対応を進めていきたい」と回答を行いました。

 

「年収の壁」とは?

 一定の収入を得ることで、世帯主の扶養から外れ、税や社会保険料の負担が生じる現象の名称。具体的には、配偶者控除から外れ、多くの企業で「家族手当」の支給対象からも外れる「103万円の壁」。社会保険料の負担が生じる「106万円(企業規模によっては130万円)の壁」。配偶者特別控除から外れる「150万円の壁」などが指摘されている。この間、川合孝典、田村まみ両組織内参議院議員の国会質問もあり、岸田文雄総理大臣が「年収の壁」の見直しを明言するなど、注目が集まっている。

 

 

”医薬品の安定供給を維持するために” 薬価制度の抜本的見直しを求める

 

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加藤大臣(左)に対する質問への回答に耳を傾ける田村議員

 

 続いて、田村議員は社会保障を支える「薬価制度」に関する質疑を実施。具体的に、田村議員は「新薬開発に対する支援は前向きな政策実現が進んでおり、今年度の薬価改定においては緊急・特例的な措置として、『不採算再算定』(=不採算に陥った医薬品の薬価を引き上げる措置)も行われた」と指摘しました。一方で、「製薬業界の産業構造に注目した場合、いわゆる下請けや孫請けに当たるCMO(=医薬品製造受託機関の略称。製薬メーカーから医薬品の製造を受託する企業等のこと)の業界まで、不採算解消の効力が及んでいないのではないか」と質しました。これに対し、加藤大臣は「ご指摘の件につき、CMO主要5社に聞き取りを実施したが、前向きな回答が得られた。引き続き、他社についても実態を把握しながら、対応を進めていきたい」と答弁を行いました。

 次に、田村議員は「現行の薬価制度における課題はよく耳にする。一方で、医薬品製造の業界において、研究開発から製造、販売までの水平分業が進む産業構造の変化をふまえ、薬価制度自体の抜本的な変化が求められているように感じる。薬価制度や薬価制度以外の製造業への支援を含め、医薬品を実際に製造する業界に対して別な対応としての支援が必要なのではないか」と提起しました。これを受けて、城克文医薬産業振興・医療情報審議官は「引き続き、実態を把握しながら、ご指摘の産業構造の変化の視点もふまえ、必要な対応を検討していきたい」と回答しました。この回答を受けて、田村議員は「中規模・小規模事業者には、経済産業省や中小企業庁が用意している支援メニューに辿り着かない企業も少なくない。こういった省庁との連携を含めて、対応を検討してほしい」と重ねて訴えました。

 さらに、田村議員は医療機器メーカーの関係者から寄せられた意見に言及。「価格転嫁が進められるなかで、医療機器については、診療報酬の技術料のなかに包括されていることもあり、『価格転嫁が難しい』との声が寄せられている。医療機器メーカーにおいても、原材料費の高騰などが適正に反映されるように支援が必要」と求めました。これに対し、伊原和人保険局長は「これまで、診療報酬については『医療経済実態調査』で実態を把握し対応を行ってきた。今後も、同調査もはじめ、現場の声を集めながら、対応を検討していきたい」と回答しました。

 加えて、田村議員は血液製剤などの具体例を上げながら、「製剤で原材料費率が極めて高いものについては、原材料費の高騰に対し、下支えが不十分であり、既存の薬価制度の限界が来ているように感じる。有識者会議の議論も、これまでの制度の延長線上に終始している。医薬品産業の未来を考えたときに、まったく新しい薬価の評価制度も必要なのではないか」と加藤大臣に問いかけました。これに対し、加藤大臣は「今年度の薬価改定の影響を分析しながら、ご指摘いただいた構造的な問題についても、これまでの延長線上に終始するのではなく『解決』を目ざしていきたい」と答弁しました。

 最後に、田村議員は「医療機関に対する経営コンサルタントのホームページを検索すると、『他病院の取引価格と比較しながら…』や『薬の値引き交渉術勉強会』などと謳っているものが多い。他社の状況を見ながら、価格交渉をするのはある意味で『談合』に近いと感じる。公正取引委員会と連携し、告示や運用基準を策定するなど、厚生労働省として厳正な対処を求めたい」と提起しました。これに対し、加藤大臣は「一部に過度な値引き交渉が行われている実態は把握している。これをふまえ、医薬品流通の改善策を検討していきたい」と回答しました。

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