新村弁護士 佐藤執行委員

新村弁護士による基調講演の様子(左)。右は報告を行う佐藤流通部門執行委員

”働く仲間をカスタマーハラスメントから守る”

「カスタマーハラスメント」とは?
 顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・様態により、労働者の就業環境が害されるもの。(厚生労働省「カスハラ対策企業マニュアル」から引用)

 

 2022年12月16日、連合(日本労働組合総連合会)は初めてとなる「カスタマー・ハラスメント対策シンポジウム」をWeb併用で開催し、約120名が参加しました。

 シンポジウムでは、はじめに旬法法律事務所の新村響子弁護士が講演を行いました。新村弁護士は「カスハラの被害が拡大しているが、現在の日本の法律では対応が不十分。世界標準のハラスメント対策へ向けて、ILO第190号条約などを生かしながら、労働組合が社会をリードしていくべき」と提起しました。

「ILO第190号条約」とは?
 「仕事の世界における暴力およびハラスメントの撤廃に関する条約」。2019年6月、あらゆる暴力とハラスメントを根絶するために、ILO100周年記念総会で採択された(2021年6月25日発効)。現在、日本は未批准であり、連合は政府に対して早期批准を求めている。
井上局長

井上連合総合政策推進局長による閉会の挨拶

カスタマーハラスメントの根絶を目ざし、連合や他産別と連携

 

 続いて、連合本部が実施した「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」(2022年11月実施)の報告があり、回答者の7割以上が業界別ガイドラインや法整備を求める実態が明らかとなりました。

 その後、UAゼンセンと自治労が産別の取り組みを報告しました。佐藤宏太UAゼンセン流通部門執行委員は、これまでのUAゼンセンの活動を報告したうえで、「カスハラの根絶へ向け、連合や他産別と協力して取り組んでいきたい」と訴えました。

 最後に、井上久美枝連合総合政策推進局長が、「2023連合春季生活労働条件闘争では、カスタマーハラスメントを中心にあらゆるハラスメントの根絶に取り組む」とし、法律を上回る労働組合の取り組みを呼びかけました。

これまでの取り組み(抜粋)

 現在、UAゼンセンは悪質クレーム行為等のカスタマーハラスメント対策に力を注いでいます。各種調査をつうじた現場の実態把握、組織内国会議員と連携した省庁への要請、国会集会や各種セミナーをつうじた情報発信と世論喚起など、これまでのUAゼンセンの取り組みの一部を下記のとおり紹介します。

 
  

2016

  

流通部門を中心に悪質クレーム対策が本格スタート!

 
 
  

11月29日~流通部門は「政策キャラバンフォーラム」を全国各地を巡り開催。「サービスを提供する側と受ける側が共に尊重される社会」の実現を掲げ、署名活動や各省庁への要請活動、他産別との情報共有など、悪質クレーム対策を本格的にスタートさせた。

 
 
  

2017

  

”悪質クレーム行為”の実態把握を目ざし、アンケート調査を実施

10月:流通部門は「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査」の結果を取りまとめた。

本調査では168組合から5万878件の回答が集まり、7割超の仲間が悪質クレームを受けたことがあると回答するなど、現場の実態が明らかになった。

また、企業になんらかの対応を求める声は6割近くにものぼった。

  

11月16日:上記調査結果にもとづき、厚生労働省に悪質クレーム対策を求める要請を実施. 要請後にはマスコミ各社に対して記者会見を開催した。

11月20日:「悪質クレーム(仮称)対策セミナー」を開催。

上記調査の結果報告に加え、総合サービス部門が集約した事例の紹介、弁護士による悪質クレームへの対処法の講義、機内での迷惑行為の抑止を法制化することに成功した航空連合による報告などを共有した。

 
  

2018

悪質クレーム撲滅へ向けて署名176万筆超を集約

 

4月27日:川合孝典組織内参議院議員が発議し、パワーハラスメントの規制を求める「パワハラ規制法案」を参議院に提出。本法案のなかには、悪質クレーム(迷惑行為)の抑止・撲滅に関する項目が盛り込まれる。

その後、6月28日の参議院厚生労働委員会で本法案が否決される(野党提出法案が審議されるのは極めて異例)。

  

5月25日:流通部門は「悪質クレーム対策」をテーマに第8回労使研究会を開催。悪質クレーム対策の重要性と取り組みの課題を労使で共有した。

 
  

5月27~31日:松浦昭彦会長ら5名がSDA(=オーストラリア店舗流通関連労働組合、オーストラリアの流通・小売業労働者およそ20万名が加入する同国内最大の産業別労働組合)と交流。悪質クレーム(迷惑行為)撲滅へ向けた取り組みを報告した。

 

5月29日:連合は「倫理的な消費行動の促進に向けたシンポジウム」を開催。流通部門の西尾多聞事務局長(当時)がUAゼンセンの「悪質クレーム対策」の取り組みを報告した。

 

7月31日:「悪質クレーム(迷惑行為)」の撲滅へ向けた署名。目標の100万筆を大きく上回り176万4472筆(UAゼンセン124万399筆、他産別52万4073筆)を集約した。

 

8月10日:松浦昭彦会長、川合孝典組織内参議院議員らが、厚生労働省に対して、上記署名を提出。悪質クレームの抑止・撲滅へ向けた施策の実現へ向けた要請を行った。

9月11日:記者会見を開催。流通部門に続き、総合サービス部門が実施した悪質クレームに関するアンケート調査の結果を報告した。本アンケート調査では、外食、タクシー、ホテル、パチンコホール、病院や介護など3万名を超える組合員から回答があり、回答者の4分の3以上が業務中、迷惑行為に遭遇したことがあるなど、現場の実態が明らかとなった。

 

9月18日:松浦昭彦会長、川合孝典組織内参議院議員らが消費者庁に要請を実施。倫理的な消費行動の促進へ向けた啓発などの取り組みを求めた。

 

2019

”悪質クレーム”対策の法制化を目ざして

 

5月10日:川合孝典組織内参議院議員が「悪質クレーム対策推進法案」を参議院に提出

 

5月29日:「女性活躍推進およびハラスメント対策関連法案」が成立。附帯決議において、悪質クレームをはじめとした顧客からの著しい迷惑行為の防止へ向け、必要な措置を講ずることなどが明記される。

 

6月1日:「労働施策総合推進法」が成立。企業にパワハラ防止策を取ることが義務付けられる。具体的なパワハラの内容については、指針で定めることとされた。

 
  

7月:流通部門が悪質クレーム(迷惑行為)啓発動画を制作。UAゼンセンホームページで公開した。

 

7月21日:第25回参議院議員選挙(比例代表)で、田村まみ組織内候補が悪質クレームなどの迷惑行為の防止を訴え、初当選を果たした。

 
  

12月23日:労働政策審議会「雇用環境・均等分科会」で「労働施策総合推進法」の指針おいて、悪質クレーム行為について相談対応の体制整備や被害者への配慮などが「望ましい取り組み」とされ、対応マニュアルの作成や研修の実施も有効と明記された。

 
  

2020

”悪質クレーム”などカスタマーハラスメントについて世論喚起

 

7月~9月:サービス業に従事している組合員を対象に「悪質クレームアンケート調査」を実施。

 
  

12月3日:悪質クレーム対策を求める国会集会を開催。与野党の国会議員をはじめ約110名が出席した。集会のなかでは、悪質クレーム防止へ向けて法整備や世論喚起の必要性を訴えた。

 
 
  

2021

カスタマーハラスメントを周知・啓発

 

1月21日:政府が第1回「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」を開催。UAゼンセンから西尾多聞副書記長や流通、総合サービス部門の担当者が出席し、「悪質クレームアンケート調査」の結果などを報告した。

  
  

6月6日:日本アンガーマネジメント協会がカスタマーハラスメント防止へ向けたオンラインセミナー(UAゼンセン後援)を開催。流通部門の担当者が出席し、UAゼンセンの取り組みを紹介した。

 
 

2022

政府が「対策企業マニュアル」を策定!”さらなる対策を!”

 
  

2月25日:厚生労働省が「カスハラ対策企業マニュアル」を作成・公開。合わせて啓発ポスターも公表される。

 

4月1日:UAゼンセン秋田県支部の要請が実り、秋田県で「秋田県多様性に満ちた社会づくり基本条例」および「指針」のなかにカスタマーハラスメントが明記される。

 

4月6日:第1回「カスタマーハラスメントに関する情報交換会」を開催。連合構成組織の産別が集まり、情報交換を行う初の機会となった。

 

5月19日:川合孝典組織内参議院議員が2019年に廃案となった「悪質クレーム対策推進法案」をブラッシュアップさせ、「カスハラ対策法案」を参議院に提出

 

7月10~11日:第26回参議院議員選挙(比例代表)で川合孝典組織内参議院議員が再選。また、茨城選挙区では堂込まきこ組織内参議院議員が初当選を果たした。

 

9月14日:連合主催で第2回「カスタマーハラスメントに関する情報交換会」が開催される。UAゼンセンからは西尾多聞副書記長をはじめ、流通、総合サービスの両部門担当者が労使による取り組みを共有した。

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