”最低賃金の引き上げに合わせ、「企業内最低賃金」引き上げの取り組みを”

 

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Zoomウェビナーで全国各地の加盟組合に助成金の説明を実施

 

 UAゼンセンでは8~10月を「最低賃金改定に関する取り組み強化月間」に設定しています。また、本年は従来の法定最低賃金の遵守に関する取り組みはもとより、物価上昇の継続などをふまえ、企業内最低賃金協定の再締結(引き上げ)にも取り組み、その内容を集約し、2024労働条件闘争に生かすこととしています。

 これらの取り組みの一環として、UAゼンセンは2023年8月28日、加盟組合が労使交渉をつうじ、企業内最低賃金を引き上げることができるように、政府の各種助成金を紹介・解説するために「助成金活用セミナー」を開催。Zoomウェビナーを活用した本セミナーには、全国各地の加盟組合を中心に70名が出席しました。

 

 セミナーの冒頭、UAゼンセンの松井健労働条件局長は「本年は物価上昇などを背景に、全国加重平均で43円(全国加重平均で時給1004円)という過去最高の最低賃金引き上げが実現した。今回の引き上げに関する民間実施の調査によると、小売りやサービス業を中心にパート、アルバイト募集の3分の1超に影響が出るとされている。また、別の調査でも今回の引き上げをふまえ、7割の企業が賃上げを予定しているとされ、実際に対応を迫られている加盟組合も多い。また、最低賃金の引き上げはいわゆる『年収の壁』にも影響を与え、より一層、就業調整を選択する短時間労働者が増加することが予想される。『年収の壁』問題の解決には社会保険の適用拡大が一番有効な対策となる。これらの課題に対し、政府は各種助成金を用意しており、労働組合から企業に対し、助成金の活用を促し、課題解決につなげてほしい」と提起しました。その後、厚生労働者の担当者を講師に招き、「キャリアアップ助成金」「業務改善助成金」のそれぞれについて説明を行った。

 

「キャリアアップ助成金」や「業務改善助成金」の積極的な活用へ

 

井上氏 川辺氏

各助成金について説明を行う井上課長補佐(左)と川辺副主任中央賃金指導官

 

 最初に、雇用環境・均等局有期・短時間労働課の井上靖治課長補佐が「キャリアアップ助成金」(全6コース)のうち、とりわけ「賃金規定等改定コース」「短時間労働者労働時間延長コース」の2つについて説明を行いました。井上課長補佐は同助成金に関する解説を加えながら、提出が必要な書類を初め申請に関する具体的な手続きや支給までの流れ、申請時の注意事項などを紹介。「『キャリアアップ助成金』の財源は事業主が負担する雇用保険料。積極的に活用していただき、従業員の処遇改善などにつなげてほしい」と強調しました。

 

 

「キャリアアップ助成金」とは?

 

 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者らの企業内でのキャリアップを促進するために、事業主が実施する正社員化や処遇改善の取り組みに対し、助成金を支給する制度。正社員化支援を目的とする「正社員化コース」「障がい者正社員化コース」と、処遇改善支援を目的とする「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「短時間労働者労働時間延長コース」の6種類が用意されている。

 

 次に、労働基準局賃金課の川辺博之副主任中央賃金指導官が「業務改善助成金」に関する説明を行いました。川辺副主任中央賃金指導官は、対象となる中規模・小規模の事業者や必要な賃金引き上げの内容などを示すとともに、「助成金が賃金原資への補填のみに終始すれば、企業はいずれ《息切れ》の状態になる。そのため、持続的な賃上げと生産性向上の好循環が必要であり、この助成金の活用でその実現をはかってほしい」と語りました。

 

 

「業務改善助成金」とは?

 

 生産性向上に資する設備投資など(機械設備やコンサルティング導入、人材育成・教育訓練などを含む)を行うとともに、事業所内の最低賃金を一定金額以上に引き上げた場合に、その設備投資にかかった費用を助成する制度。事業所内の最低賃金引き上げ額に応じ4つのコースに分かれ、助成上限などに差が設けられている。

 

 「キャリアアップ助成金」「業務改善助成金」に関する説明の終了後、加盟組合からの出席者を中心に質疑応答を実施。具体的には、申請に必要な資料や期限の確認や今後の制度の方向性などを全体で共有しました。

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