参議院・本会議

田村議員による代表質問の様子。障がい者就労支援を中心に改正案の内容を質した

”国民の福祉につながる障がい者就労支援を”

 

 2022年12月5日、田村まみ組織内参議院議員は参議院・本会議において、衆議院を11月21日に通過し、参議院での審議が始まった障がい者総合支援法等の改正案に関し、国民民主党・新緑風会を代表して質問を行いました。

 田村議員は改正案に盛り込まれた内容について、障がい者就労支援を中心に具体的な項目を上げつつ、加藤勝信厚生労働大臣に質問を投げかけました。その後、田村議員は心身障がい者等に対する就労支援において先駆的な取り組みを行う社会福祉法人「太陽の家」(=大分県別府市。1965年の創立以降、『保護より機会を!』という理念のもと、民間企業と共同出資会社を設立し、心身障がい者等の雇用創出・就労支援に取り組んでいる)を視察したことにふれ、「国会議員の一人として、一人の思いと行動で始まる挑戦を広く国民の福祉のために立法で支えていきたい」と決意を述べ、質問を締めくくりました。

 田村議員による代表質問に対し、加藤大臣は上げられた各項目ごとに回答を行いました。

「障がい者総合支援法」とは?

 正式名称は「障がい者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律」。本法には、障がいを持つ人が基本的人権を有する個人として、尊厳ある日常生活や社会生活を営むことができるように、必要となる福祉サービス等に関する給付や地域生活支援事業などについて定められている。

 現在、政府は本法の改正を進めている。改正案には、障がいを持つ人の地域生活や就労支援を強化し、希望する生活を実現するために、地域生活の支援体制の充実、多様な就労ニーズに対する支援と障がい者雇用の質の向上、精神障がい者の希望・ニーズに応じた支援体制の整備、難病患者等に対する適切な医療の充実・医療生活支援の強化、障がい福祉サービス等のデータベースに関する規定の整備などが盛り込まれている。

 

”障がい者就労支援の地域間格差の解消が必要”

加藤大臣 田村議員

質疑を行う田村議員(右)と答弁する加藤大臣(左)

 本会議の翌日(2022年12月6日)、田村議員は厚生労働委員会においても質疑を行いました。

 質疑に先立ち、田村議員は本改正案が「束ね法案」(=複数の法律を改正しようとするとき、それらを束ねて一本の法律案として改正案を提出・審議すること)として提出されていることに言及。改正法案に盛り込まれた各内容を一つひとつていねいに議論する十分な時間が確保できない可能性に懸念を示し、「今後の審議日程について、改めて委員会のメンバーと考えていくべきではないか」と問題提起しました。

 その後、田村議員は本改正により新設される「就労選択支援」を取り上げ質疑を行いました。具体的には、就労選択支援の実施者について、今後、具体的な選定基準などが決められていくことに言及。「現在、就労支援を行っている事業者から届いている声として、地域により障がい者就労支援の充実などに大きな差があるなかで、これまで障がい者の就労支援に取り組んできた事業者が正当に評価され、実績にもとづき、新たな就労選択支援の事業に参画できるように適切な選定基準を設けてほしい。また、地域における予算の有無や多寡などにより、就労選択支援の内容や事業者の数に大幅な地域間格差が生じないように対策を講じてほしい」と訴えました。

 これに対し、加藤大臣は「就労選択支援は、『就労アセスメント』(=就労系サービスの利用意向がある障がい者と協同し、就労ニーズの把握や能力、適性の評価を行い、就労開始後の配慮事項等の整理を行うこと)にもとづいて行われる。実施者に関する選定基準についてはこれから議論が進められるが、すでに地域で障がい者就労支援に取り組んできたことなども選定の際の項目に盛り込まれるように、有識者等の意見も聞きながら検討していきたい」という趣旨の回答を行いました。

田村議員

ギリギリまで資料に目をとおし、質問内容を確認する田村議員

情報公表や法定雇用率の改定など 就労支援につながる対策を求める

 

 続いて、田村議員は障がい者就労支援に関する情報公表について質疑。現在、約15万5000件の福祉サービス事業者の掲載がある「WAM NET」(=Welfare And Medical Service NETwork System。通称「ワムネット」。独立行政法人「福祉医療機構」が運営する福祉・保健・医療の総合情報サイト。福祉・保健・医療サービスを利用したいときや、制度について知りたいときに必要になる情報を提供している。2016年、障がい者総合支援法の改正で新設された)において、従業員数やサービス内容など基本的な項目についても空欄が目立つことを指摘。「就労を望む障がい者のニーズに応えるため、また適正な情報公表を行っている事業者との不公平感を是正するためにも、厚生労働省として、障がい者総合支援法にもとづき、情報公表について調査や指導など、改善へ向けて適切な対応を行うべき」と求めました。

 これに対し、加藤大臣は「ご指摘の実態をふまえ、情報公表を十分に行っていない事業者への対応を検討していきたい」旨を答弁しました。重ねて、田村議員は「一方で処遇面を含めて、事業者の負担を軽減することで、情報公表の作業に充てる時間を確保する視点も重要」と提起しました。

 さらに、田村議員は第208回通常国会で採択された難病患者団体からの請願に言及。6年連続で採択されている同請願のなかで、「難病患者にとって就労が経済的な側面のみならず、社会参加と生きる希望につながるものであり、障がい者雇用率の対象にすることで就労支援を充実してほしい」旨が記載されていることに言及し、「途中から難病になる場合もあるが、労働相談の現場では、新卒採用の場面で『不採用になることを恐れ、難病を隠して就労した』などの事例も存在する。なぜ、障がい者雇用率の対象としないのか」と質しました。

 田村議員の質問に対し、加藤大臣は「一律に就労困難性があるとは言い難く、現在は調査・研究を進めている段階にある。引き続き、支援体制を強化し、難病患者の皆さんの就労支援について努力していきたい」旨、回答を行いました。

 

 この他、田村議員は障がい者雇用調整金の見直しや精神保健福祉法関連についても質疑を行いました。

田村議員

加藤大臣に実効性ある障がい者就労支援へ向けた提起を行う田村議員

「UAゼンセン重点政策」と障がい者就労支援

 UAゼンセンでは毎年、早期実現を目ざす政策や重要度の高い政策について「重点政策」として取りまとめ、それにもとづく要請を行っている。2022年4月~2023年3月を取り組み期間として設定する「2022年度UAゼンセン重点政策」においては、「障がい者の就労支援」として、2021年3月に障がい者の法定雇用率が「2.3%」に引き上げられたことをふまえ、(1)就労支援コーディネーターや職場適応援助者(ジョブコーチ)の周知、テレワークの普及促進など、採用から定着までの一貫したサポート体制の充実、(2)「精神・発達障がい者しごとサポーター」の養成を継続し、「サポーター意思表示グッズ」の着用や事業場で掲示できる器材作成などをつうじ、精神障がい者の就労に対する顧客、取引先等の理解を深める啓発活動の強化、(3)障がい者手帳を持たない難病患者の就労支援を進めることなどを項目として記載している。

 

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